2022年の「お正月ドラマ」の注目は、なんといっても天海祐希(54) 主演の刑事ドラマ「緊急取調室 特別招集 2022 8億円のお年玉」(テレビ朝日系)だろう。
今年7月クールで放送された同作の4th SEASONは、最終回でも平均視聴率13.8%(ビデオリサーチ調べ・関東地区・世帯・リアルタイム)という安定した数字を叩きだした。
全話の平均視聴率も12.1%と堂々の二ケタ超え。改めて人気シリーズだということを証明した。

 

天海が主演した連ドラは、常に注目を集める。
そこで今回は彼女主演の連ドラの中から平均視聴率(関東地区・ビデオリサーチ調べ・世帯視聴率)ベスト3とワースト3を調べてみた。

 

まずはベストから。

第3位は09年 4月クール放送の刑事ドラマ「BOSS」(フジ系)。

多様化する犯罪、検挙率低下への対策というアピールのために、警視庁は“特別犯罪対策室”という部署を新設。
その室長に就任したのが、天海演じるアメリカ研修帰りの訳ありキャリアの大澤絵里子だった。
大澤と彼女の下に就くのは、各部署から“不要”な人材とされ、寄せ集められた個性的な“精鋭”たちだ。

コメディタッチでありながら、本格派の刑事ドラマの要素もあった。
FBI仕込みの“プロファイリング”や科捜研と連携した科学技術を応用した捜査が展開され、意表を突かれるような結末が多く、非常に見ごたえのある作品であった。
結果、平均視聴率は17.0%をマーク。
11年4月クールから放送された2ndシーズンも平均視聴率15.1%を獲得している。

 

第2位は05年7月クールの「女王の教室」(日本テレビ系)。

天海演じる悪魔のような“鬼教師”阿久津真矢と半崎小学校6年3組の児童との1年間に亘る“闘い”を描いた学園ドラマだ。
真矢は強権的な態度でクラスを支配しようとする。
これは「3年B組金八先生」(TBS系)や「GTO」(フジテレビ系)といった学園ドラマへのアンチテーゼ的な内容であった。
放送開始直後から大きな反響を呼び、賛否両論の議論が巻き起こる。
結果、平均視聴率17.3%をマークするヒット作となったのである。

冷酷に見える真矢の真の狙いに気づいた生徒が、志田未来演じる神田和美だった。
物語は和美を中心とした24人の教え子たちの成長を軸として描かれており、いわば和美はこのドラマのもう1人の主人公だった。
主演の天海の代表作ではあるが、志田も本作をきっかけにブレイクした点は見逃せない。
また、本編終了後に2部作からなるスペシャルドラマが放送されたが、どちらも18.7%と21.2%と高視聴率をマークしている。

 

1位に輝いた作品は、2006年4月クール放送のフジテレビ系“月9ドラマ”「トップキャスター」で、平均視聴率は18.4%だった。

本作で天海が演じたのは“伝説のキャスター”椿木春香。
かつてスクープを連発していたが、8年前のある事件がきっかけで番組を降板。
アメリカでフリージャーナリストとして活動していたところ、突然日本に呼び戻され、新番組の顔に就任した……という役どころだ。

春香は仕事に関しては完全無欠で、スクープを狙うことに命をかけている。
一方、私生活は片付けができず、欠点だらけなところがいいギャップになっているキャラだった。
彼女のアシスタントを演じた矢田亜希子など、登場人物たちの個性が光っていた。
題材が題材だけにシリアスで硬派な報道ドラマかと思いきや、むしろ逆。
ひとつのニュース番組を舞台に繰り広げられる人間模様を描いたライトコメディ作品だった。

本作では人気占い師の“インチキ臭さ”にスポットを当てた第3話が問題視されたことをご記憶の方も多いのではないか。
明らかに細木数子を連想させるものだったことで、細木本人が激怒し、フジテレビに猛抗議を行った結果、スタッフが謝罪する事態となった。
こうした話題も逆に高視聴率をキープする追い風になったのだろう。

 

さて、ここからは“視聴率女優”天海祐希を持ってしても低空飛行に終わった作品の紹介である。

 

ワースト3位となったのは12年4月クール作品の「カエルの王女さま」(フジ系)。

かつて日本でミュージカルスターとして活躍するも、ニューヨークのブロードウェイでは落ちこぼれてしまった倉坂澪を天海は演じた。
高校時代の恩師の手紙で帰郷した彼女は、ママさん合唱団のコーチを務めることに。
だが、いざ戻ってみると故郷は財政難にあえいでいる。
街の活気を取り戻すため、澪はママさん合唱団で町おこしをするべく奮闘するというストーリーだ。

劇中では70年代以降の日本の音楽シーンを彩った数々の名曲が使われている。
何度も出てくる天海の歌唱シーンも“さすがは元・宝塚“と思わせた。
だが、素朴な田舎の世界観と派手なミュージカルの要素が、噛み合っていなかったように感じた。
高校の合唱部を舞台にしたアメリカの大ヒットドラマ「glee」を意識したと思われるが、完成度はいまひとつ。
平均視聴率は9.1%だった。

 

ワースト2位は10年7月クール放送の「GOLD」(フジ系)だった。

天海が演じる早乙女悠里は都内に巨大なスポーツジムやエステを経営するバリバリの“セレブ”でありながら、独特の教育論で子供たちを育てあげ、“五輪の金メダル”を取らせることを最重要課題として生きる女性。
脚本がヒットメーカーの野島伸司ということもあって、高視聴率が期待されたが、平均視聴率は8.9%に終わってしまった。

野島作品といえばシリアスでドロドロした展開でおなじみだが、本作は天海とその秘書・新倉リカ役の長澤まさみとの掛け合いがコメディになっていたのが特徴だ。
ゆえに“野島伸司らしさ”を求めた視聴者にとっては期待外れだった可能性があるといえる。
笑えるシーンとシリアスな人間関係の緩急が絶妙だし、天海の子供役で若き日の松坂桃李と武井咲が出ているので、個人的にはまた見返してみたい作品なのだが……。

 

ワースト1は、16年10月クール放送の「Chef~三ツ星の給食~」(フジ系)で、その平均視聴率は7.0%どまりであった。

天海が演じたのは世界中から注目される三ツ星レストランの天才女性シェフ・星野光子。
光子はオーナーの陰謀でレストランを辞めさせられるが、テレビ番組の企画で“学校給食”を作ることになる。
世界最高の料理を作ってきた彼女にとって、たやすいオファーだと思われたのだが、栄養や経費など多くの壁にぶつかり失敗が続いてしまう。

数あるグルメドラマでも「学校給食」という題材は新鮮だったが、光子が自分の才能を鼻にかける天狗的なキャラという描写を早々にしてしまったため、罠にはめられても視聴者が同情出来なかった点が敗因だろう。

もっとも、最終回まで付き合った視聴者の評価は異常に高い。
光子はどんなに屈辱的な扱いを受けても、どんなに邪魔されても“最高に美味しい料理を作る”ことに努力を惜しまない。
その姿が周囲の人たち、給食室のメンバーたちの意識も変えていく。
その過程が痛快なのである。
ドラマは視聴率がすべてではないということを再認識させられる作品である。

 

天海祐希主演の連ドラは「緊急取調室」4th SEASONを含めてちょうど20作。
そのうち平均視聴率が二ケタを割った作品は、上記の3作に「演歌の女王」(日テレ系・07年1月クール放送、平均視聴率9.2%)を含めたたった4本。
やはり数字を“持っている”女優なのである。