村上春樹の短編小説を実写化した映画『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督)が、海外の映画賞で快挙を連発している。
米アカデミー賞へのノミネートも期待されているが、主演の西島秀俊がこれをきっかけに渡辺謙や真田広之らに続く国際派俳優へと成長していくのではないかとも話題だ。

 

同映画は、妻を亡くした喪失感を抱える主人公・家福(西島)が、寡黙な専属ドライバー・みさき(三浦透子)と過ごす中で自らの人生に向き合っていくというストーリー。
村上春樹作品の実写化ということで当初から前評判は高かったが、今年7月にカンヌ国際映画祭で日本作品として初めて、脚本賞など4冠を獲得したことで注目度が跳ね上がった。

 

さらに12月、ニューヨーク映画批評家協会賞で日本映画初となる作品賞を受賞。
続けて、ボストン映画批評家協会賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞の4冠を達成し、ロサンゼルス映画批評家協会賞でも作品賞と脚本賞を獲得するなど快進撃を続けている。

「いずれも米アカデミー賞の前哨戦として知られる賞ばかりで、日本映画としてこの快進撃は異例中の異例。
ゴールデン・グローブ賞でも、非英語映画賞(旧・外国語映画賞)にノミネートが決定しています。
この快挙続きの状況なら、米アカデミー賞でも国際長編映画賞の候補になるのはほぼ確実でしょう」(映画ライター)

 

今月17日には、映画通で知られる元米大統領のバラク・オバマ氏が自身のTwitterで「今年のお気に入り映画」のひとつとして『ドライブ・マイ・カー』を挙げ、リストの一番上に置いていた。
その事実だけでも、米国での評価の高さがうかがえる。

 

今作をきっかけとして、主演の西島への注目度もぐんぐん上がっていきそうだ。

「非英語作品であるにもかかわらず、西島がボストン映画批評家協会賞で主演男優賞を獲得したインパクトは大きい。
その年の映画界を代表する俳優を決める米ニューヨーク・タイムズ紙の名物企画『The Best Actors』でも今年、ベネディクト・カンバーバッチ、ウィル・スミス、ホアキン・フェニックスら世界的スターと並んで、西島がアジアから唯一選出された。
渡辺謙や菊地凛子ら海外作品に出演した日本人俳優が選ばれたことは過去にもありますが、日本映画からの選出は初で、こちらも大快挙。
西島はほかにも、インディワイアやヴァニティ・フェア誌でも2021年のベスト・パフォーマーのひとりとして取り上げられており、『ドライブ・マイ・カー』での演技が高く評価されていることがうかがえます」(前出)

 

実は西島は「英語力」も高いそうで、ハリウッドからの視線はさらに熱を帯びそうだという。

「2011年に主演した映画『CUT』(アミール・ナデリ監督)がヴェネツィア国際映画祭で上映された際の会見では、自ら英語で自分の思いや考えを話していました。
当時も発音のよさに驚いた人が多かったですし、英語のセリフもOKとなればハリウッド関係者から大注目されるはずです」(前出)

 

西島といえば、90年代に大手事務所から「イケメン俳優」として大々的に売り出されたが、自身の求める俳優像との違いから移籍。
以降は地上波ドラマから遠ざかるなど苦難の時期が続き、ようやく再ブレイクを果たしたのは中山美穂と共演した映画『サヨナライツカ』が公開された2010年あたりからだった。

 

かなりの苦労人といえるが、それからはドラマや映画で引っ張りだこに。今年も多くの作品に出演し、特に内野聖陽と共演した人気ドラマの映画版『劇場版 きのう何食べた?』は興行収入10億円を突破するヒットとなっている。

 

秋クールから放送されている主演ドラマ『真犯人フラグ』(日本テレビ系)は視聴率的にはそれほど振るわなかったものの、来年1月からの第二部「真相編」で爆発的に盛り上がる可能性も。
さらに、今月30日公開予定の映画『99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE』や、来年5月公開予定の映画『シン・ウルトラマン』など、話題作への出演も控えている。

 

誰も文句のつけようがない実力派の売れっ子俳優であり、年齢的にも50歳の大台に乗ったことで、役者としてひとつの「到達点」を迎えたように見えた西島だったが、海外での『ドライブ・マイ・カー』の快進撃によって、彼のキャリアはさらなる高みへと昇っていきそうな気配。
今後、世界を股にかけて活躍するようになる可能性もありそうだ。