日本相撲協会は20日、十両・貴源治(常盤山)が大麻を使用していたことが判明したと発表した。
本人は名古屋場所中に大麻たばこを吸っていたことを認めたという。

 

発表によると、今月17日の昼頃に「貴源治が大麻を使用しているのではないか」といううわさ話が力士の間で交わされているとの情報が協会事務所に入った。
常盤山部屋の協会員2人がそのことを知っているかもしれない、との内容が含まれていたため、午後8時頃に師匠の常盤山親方(元小結・隆三杉)と協会職員で、その2人に話を聞いたところ、うち1人から「かなり前に『貴源治が大麻をやっている』と力士らが話しているのを傍らで聞いたことがある」、「それ以降はそのような話を聞いたことはない」との情報を入手した。

 

これを受けて協会は同18日の名古屋場所千秋楽取組後に貴源治と常盤山親方を呼び、尾車コンプライアンス部長(元大関・琴風)が面談。
本人は「大麻成分が含まれているCBDオイルという痛み止めを使用している」、「あがり症を抑えるために食べているグミにも大麻成分が入っていると聞いた」などとし、「そういったことから、うわさ話が出たのではないか」などとして大麻の使用事実は否認したが、薬物検査には応じることに同意した。

 

翌19日の午後3時頃に、コンプライアンス委員会の作業班弁護士の立ち会いのもと、クリニックで薬物検査(尿検査)を実施したところ、大麻陽性の判定が出た。
これを受けて青沼隆之コンプライアンス委員長が聞き取りを行ったところ、貴源治は名古屋場所中に宿舎近くの道路で歩きながら大麻たばこを1本吸っていたことを認めた。

 

そのため相撲協会は内部規定に従って警察に通報。
警視庁が捜査を開始し、現在も捜査中という。
貴源治は警視庁の事情聴取終了後に帰宅を許され、師匠の指示で謹慎しているという。

 

八角理事長(元横綱・北勝海)はコンプライアンス委員会に事実関係の調査と処分意見の答申を委嘱。
今後は警察の捜査に全面的に協力し、調査や処分の検討を実施する予定としている。

 

貴源治は、元横綱貴乃花が興した貴乃花部屋で2013年春場所に初土俵を踏み、19年名古屋場所で新入幕。
幕内を2場所務めた。
師匠が18年10月に協会を退職したことを受け、元小結隆三杉が師匠を務める千賀ノ浦部屋に転属。
その後、師匠の名跡変更に伴い常盤山部屋に所属していた。 

 

角界の大麻問題では2008年に若ノ鵬が逮捕され、露鵬、白露山も検査で使用が発覚。
当時の北の湖理事長(元横綱)が引責辞任に追い込まれた。
09年も若麒麟が逮捕され、大きな衝撃を与えた。
その後、協会は再発防止へ取り組んできたが、当時の危機感を知らない24歳は、再び同じ過ちを繰り返した。

 

貴源治は中卒で貴乃花部屋に入門。
貴景勝らと厳しい稽古を積み、19歳で新十両昇進を決めて期待された。
しかし、師匠の退職で18年に部屋は消滅。
双子の兄、貴ノ富士は度重なる暴力問題で19年に角界を去った。

 

兄との交流を断った貴源治だが、今年6月、約1年半ぶりに電話で連絡を取ったことを明かし、「兄貴の声を忘れてしまっていました」としみじみと話していた。
それだけ兄を思いながら、なぜその姿を自らの教訓にできなかったのか。
軽薄な行動で裏切ったのは、相撲界やファンだけではない。