新入幕の前頭17枚目・尊富士(24・伊勢ヶ濱)が前頭6枚目・豪ノ山(25・武隈)を押し倒しで下し、ついに110年ぶりの「新入幕V」を達成した。

 

尊富士は初土俵(22年秋場所)から所要10場所目での初優勝を果たし、優勝制度ができた1909年(明治42年)夏以降「史上最速」となる大記録も打ち立てた。
成績は13勝2敗。

 

前日、朝乃山(30・高砂)との一番で敗れた際に右足を負傷した尊富士は、その右足首にテーピングを巻いて出場。
“世紀の優勝”への大一番に挑んだ尊富士は立ち合い、鋭い出足でしっかり踏み込むと、差して豪ノ山の動きを組み止め土俵際まで寄るが、一度後ろに下がる。
だが攻めの姿勢を崩さず、再度踏み込んで前へ力強く土俵の外へ押し倒した。
勝負が決まると会場は大歓声に包まれ、土俵上で尊富士は笑顔をみせた。

 

3敗で大の里(23・二所ノ関)が星の差一つで追っていたが、本割で尊富士が勝利をつかみ文句なしの初賜杯を手にした。
大の里は結び前の一番で大関・豊昇龍(24・立浪)に土俵際逆転の下手投げに屈し、11勝4敗で今場所を終えた。

 

13日目を終え星の差「2」で優勝に王手をかけていた尊富士だが、前日14日目は朝乃山に敗れ2敗に。
さらに右足を痛めてしまうアクシデントで車いすで移動する事態となり、快挙目前で悲運に見舞われた。

 

千秋楽は休場も予想されたが出場を決断。
この日は自力歩行で会場入りし、土俵入りでも元気な姿をみせ会場から大きな声援が送られていた。

 

今場所、尊富士は初土俵から史上最速タイ(幕下付け出し除く)の所要9場所で“幕内デビュー”。
持ち味の鋭い出足を武器に初日から破竹の「11連勝」を飾り、新入幕力士としては1960年初場所の大鵬以来、64年ぶりの快挙を達成した。

 

新入幕場所での優勝は1914年(大正3年)5月場所の両国以来、110年ぶりの快挙。
さらにその両国の所要11場所での初優勝、年6場所制となった1958年以降では貴花田(貴乃花)と朝青龍の所要24場所の記録を大きく塗り替え、10場所目での“史上最速V”を達成。
まさに記録づくめの場所となった。

 

また、すでに敢闘賞と技能賞が決まっていた尊富士は「優勝した場合に」と条件がついていた殊勲賞も獲得し“トリプル受賞”の快挙も。
一人で三賞を独占するのは2000年九州場所の琴光喜以来、史上6人目の“総なめ”となった。

 

そして表彰式では少し右足を引きずりながら入場。
土俵下の優勝インタビューでは「本当に千秋楽土俵に上がれてよかったなと安心しています」と安堵の表情をみせた。

 

負傷を抱えながら挑んだ千秋楽について「このケガだったらたいした相撲を取れないと思っていた方もいたと思いますが、自分もここで負けたら皆さんが15日間大阪場所に来ていただいた意味がないなと思ったんで、その辺は自分でしっかり考えて土俵に上がりました」と、土俵への強い思いを。

 

自身入門してから10場所での最速優勝に「記録も大事ですけど、皆さんの記憶にひとつでも残りたくて必死でがんばりました」と話し、会場からは大きな拍手が沸き起こった。

 

 

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