大相撲春場所を右膝負傷で途中休場した関脇・若隆景(28)=荒汐=が、3月の春場所後に前十字靱帯(じんたい)の再建手術を受けたことが13日、分かった。

 

同手術からの復帰には半年以上かかるとされており、長期休場なら年内にも幕下転落の危機。
師匠・荒汐親方(元幕内・蒼国来)はこの日「しっかり治してから出る」と完治を優先する方針を明かした。
昨年の春場所で幕内優勝を飾った期待の大関候補は既に退院しており、今後は治療に励む予定だという。

 

7場所連続関脇を務める次期大関候補・若隆景が、苦渋の決断をした。
前十字靱帯の再建手術は一般的に復帰まで半年以上を要すると言われている。
師匠・荒汐親方は「本人も少し悩んでいたけど、悩んでいてもどうしようもないので。早くやった方がいいと」と春場所直後に手術を受けたことを明かした。
復帰のめどは立っておらず、「年内はどこまで回復するかわからないからリハビリ次第。しっかり治してから出ることは本人に言ってあるし、それまでは出すつもりもないです」と力士生命を優先して完治を目指す意向を示した。

 

春場所13日目の小結・琴ノ若(25)=佐渡ケ嶽=との最初の一番で右膝を負傷した。
翌14日目に「右前十字靱帯損傷、右外側半月板損傷などで3か月程度の療養を要する」との診断書を提出して休場。
同場所は7勝7敗1休で終え、夏場所(5月14日初日、東京・両国国技館)は三役残留で迎える見込みだった。

 

今回の手術に伴い、番付の大幅降下は必至。
最短では秋場所(9月10日初日、東京・両国国技館)までの3場所連続全休で関取の座を失うことが決定的となる。
若隆景は新関脇だった昨年春場所で初優勝しており、幕内V経験者の幕下転落となれば照ノ富士(現横綱)、徳勝龍(現十両)に次いで昭和以降3人目となる。

 

今月8日に退院し、今後は都内の病院でリハビリに励む方針。
師匠は「自宅とリハビリを行ったり来たりすると思うけど、今後どうしていくかは様子を見ながら。治るまでどのぐらいかはわからない。これからしっかりやって、治して、それだけですね」と、まな弟子の再起を心から願っている。

 

前十字靱帯は大たい骨に対して脛骨(けいこつ)が前方にズレたり、回旋しないように止める役割がある。
日本スポーツ協会スポーツドクターの安間久芳医師(59)は「アスリートにとってはその足で踏ん張り、向きを変える回旋の動揺性を抑える役割が大事です。足を軸にしてターンするのは前十字靱帯があるからできる。切れてしまうと、膝崩れ(亜脱臼)を起こしてしまう」と説明した。

 

手術をした場合は競技復帰には「一般的に約8か月」を要するという。
若隆景は半月板損傷なども併発しているが「前十字靱帯の全治にかかる期間の中で治るので、合併したことで復帰が遅れることは考えにくい」と指摘。
完治を優先する方針なだけに安間医師は「手術の後に復帰を急ぎすぎると、再建靱帯が切れてしまう可能性があるので、しっかり治してから出る方が体にはもちろんいい。100%元通りとは限らないが、近い状態には戻るはずです」との見解を述べた。

 

【前十字靱帯損傷】
ジャンプ後の着地、疾走中の急激な方向転換、相手との衝突などによって、膝関節に異常な回旋力が加わると損傷する。
受傷時には断裂音や膝が外れた感覚が生じる場合があり、関節内に出血が見られるのが特徴の一つ。
切れた前十字靱帯が自然に癒合することはなく、スポーツ復帰を目指す場合は手術以外の保存療法は無効とされ、一般的に競技復帰までに術後6か月以上を要するとされている。