年明けから3回目のワクチン接種が進んでいるが、副反応についての報告に、見逃せない表記が目立つという。

 

2月18日、厚労省のワクチン分科会副反応検討部会で、2月4日までに「新型コロナワクチン接種後の死亡として報告された事例」が1474件に上ったことが発表された。

 

分科会の調査時期と近い1月末時点で3回目接種を終えたのは人口の3.2%の約408万人に過ぎないが、死亡事例は18件(ファイザー製13件、モデルナ製5件)報告されている。
目を引くのが、うち3件が風呂場での死亡だったことだ。報告書には詳細が記載されている。

「3回目接種直後、著変(著しい変化)なく帰宅。入浴中、心肺停止で発見」(78歳・女性)
「接種当日、入浴中に心肺停止になっているところを家族が発見。心肺蘇生術施行するも心拍再開せず死亡確認」(86歳・女性)
「3回目接種後、元気がなく、眠そうだった。接種2日後の朝、自宅浴室の浴槽内で死亡しているのを発見された」(77歳・女性)

 

前者2人がファイザー製を接種し、残り1人はモデルナ製だった。
死因についてはそれぞれ、「不明」「心疾患疑い」「溺死」となっている。

 

2人には既往歴もあり、いずれもワクチン接種と死亡の因果関係について、専門家は「評価中」という報告だが、入浴と健康の関係を研究する東京都市大学人間科学部・早坂信哉教授はこう指摘する。

「まだ3回目接種後の死亡例の症例数が少なく、因果関係は証明できませんが、1日24時間のうち、風呂場にいるのはわずか30分ほど。18人中3人というのは割合としてやや高い印象を受けます」

 

通常、死亡例全体に占める風呂場での死亡例は1%台だ。

 

1、2回目接種後でも、風呂場での死亡は報告されている。
厚労省は「死亡した場所の集計はできていない」(医薬生活衛生局)ため、報告書に記載された数だけ見ても、21例に上っている。
このなかには、昨年10月、ファイザー製ワクチンを2回接種した13歳の男子が、接種から4時間後、浴槽内で死亡(死因は不明)して、注目されたケースも含まれている。

 

厚労省は、ホームページ上で、「注射した部位を強くこすらないように」とした上で「ワクチンを接種した日にお風呂に入っても構いません」「入浴により何か不具合が起きる可能性は低いと考えられます」と説明するが、前出の早坂教授は疑義を呈する。

「浴槽に入る生活習慣は日本特有で、欧米にはありません。
欧米で開発されたワクチンなので、浴槽に入ることによる影響への調査が不十分ではないでしょうか。
浴槽に入ると体温が0.5~1度上がり、免疫に影響を及ぼすことがわかっていますが、そうしたことは考慮されていないと思われます」

 

改めて厚労省に聞くと、
「海外でも国内でも接種後の入浴に関する治験は行なっていないと聞いています。
しかし、もともと高齢者の方が入浴中に亡くなるケースは多く、この報告件数であれば“ワクチン接種によって明らかに多くなった”とは言えないと考えています」
(予防接種室)という回答だった。

 

入浴中の事故の多くは体に負荷がかかったことで起きる「ヒートショック」と「熱中症」によるものとされる。

「脱衣所と風呂場の温度差や、浴槽に入る・出ることで血圧が急激に上下し、血管に強い負荷がかかることをヒートショックと言います。
血管に圧力がかかることで血管が切れて脳出血が起きたり、血管が詰まって心筋梗塞が起きます。
熱中症も浴槽に浸かり、体温が上がり過ぎると意識障害を引き起こし、溺死してしまう恐れがある。
いずれも高齢者になるとリスクは高まる」(早坂教授)

 

一方、ワクチンを接種することで体にも負荷がかかっている。

 

3回目接種の副反応は2回目と比べて軽くはない。
厚労省の専門部会の報告では、3回ともファイザー製を接種した人に起きる副反応の割合は、発熱(37.5度以上)が39.8%、接種部の痛みが91.6%、倦怠感が69.1%、頭痛が55%で、いずれも2回目接種より高い割合だ。
3回目をモデルナ製にした場合は、いずれもこの数値よりさらに高くなる。

 

ワクチンによる負荷に加え、入浴でさらに体に負荷をかけることで副反応が強まる恐れが考えられる。
医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏が説明する。

「動物実験による研究ですが、ワクチン接種後に運動をすると、免疫の効果が強まるという報告があります。
効果が強まることは副反応も強くなると考えられる。
入浴も運動と同じで体温を上げる行為ですので、副反応の出にくい高齢者にも、強い副反応が生じる恐れがあります」

 

3回目を接種する場合は、「接種当日から翌日の夜までは念のため浴槽には入らずにシャワーだけにしておいたほうが賢明です」(早坂教授)とのこと。
接種による効果とリスクを量る材料にしたい。