テレビ朝日は4日、情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」で事実に基づかない発言をしたとして、報道局社員でコメンテーターの玉川徹氏を同日付で謹慎処分にしたと発表した。

 

5日から10日間の出勤停止となる。
管理監督責任を問い報道局の情報番組センター長と番組チーフプロデューサーもけん責処分となった。

 

玉川氏は9月28日の番組で、菅義偉前首相が安倍晋三元首相の国葬で読んだ弔辞について「これこそが国葬の政治的意図」と発言。
「当然これ、電通が入ってますからね」と、大手広告代理店の名前を出し批判した。
菅氏の弔辞は「安倍さんへのラブレター」などと評価する声が多かった。
玉川氏はそれを“電通の演出”と訴え、各方面で物議を醸した。
翌日の番組で玉川氏は「事実ではありませんでした」と謝罪していた。

 

玉川氏は「僕は演出側の人間。ディレクターをやってきた。そういうふうに作りますよ」とも発言していた。
過去に“政治的意図”が伝わらないように番組制作をしてきたとも取れる内容で、こちらにも非難の声が巻き起こっていた。

 

4日の定例会見で篠塚浩社長は「国葬のさまざまな情報を入手して調べる中、誤解や事実誤認をしてしまった。本人は深く反省している」と説明。
局として電通に謝罪したことも明かした。

 

玉川氏の歯に衣(きぬ)着せぬ発言は番組の“売り”でもあったが、同時に“炎上”することも多々あった。

 

同局関係者は「これまではおとがめはなかったが、今回は全く事実に基づかない臆測での発言。処分は避けられなかったのだろう」と話した。

 

一方で篠塚社長は、謹慎期間が終わった後に再び番組に復帰するとも明言。
関係者は「同時間帯に情報番組が並ぶ中、視聴率は常にトップ。それを支えているのは玉川氏の存在。番組に戻すため、しっかり処分をしたとアピールしたかったのではないか」と内情を語った。

 

玉川氏処分の報道が伝わると、ツイッターのトレンド1位に「謹慎処分」がランクイン。
注目度の高さをうかがわせた。

 

【玉川氏“物議発言”】
・20年1月
大阪府箕面市の箕面の滝について「トンネル掘ったら水がかれちゃって、少なくなって、滝の水が少なくなったと確か取材した。回復したのかな?」とコメント。
同市がトンネル工事により滝の水がかれた事実はないと抗議。

 

・20年4月
新型コロナウイルスのPCR検査について「土日は(全て)民間医療機関の検査の件数。行政機関の検査は休み」と発言。
誤りを認めて謝罪。

 

・22年3月
ロシアによるウクライナ侵攻について「どこかでウクライナが引く以外にない」とウクライナに早期降伏を促す持論を展開、物議を醸した。

 

・22年6月
夏の電力逼迫(ひっぱく)を控え、節電などを特集した際に「嫌みなヤツはこういうのやると“放送やめればいいじゃないか”というヤツがいる。うるせえよ」と発言し炎上。

 

玉川 徹(たまかわ・とおる)
1963年(昭38)生まれ、宮城県出身の59歳。
87年に京大農学部農業工学科を卒業。
89年、京大大学院農学研究科修士課程を修了。
同年、テレビ朝日に入社。
担当した番組は「内田忠男モーニングショー」、「サンデープロジェクト」、「ザ・スクープ」、「スーパーモーニング」など。