沖縄県で2022年にエイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)患者の割合が増加している。

 

特に、エイズ発症後にHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染していたことが判明する「いきなりエイズ」の患者の割合が増加し、県では積極的な検査を呼びかけ、6月1日から各保健所でHIV検査を夜間や休日に拡充している。

 

HIVはヒト免疫不全ウイルスが免疫細胞に感染し、免疫細胞を破壊して後天的に免疫不全を起こす疾患で性感染症の一つだ。
エイズはHIVに感染した人が、免疫能の低下により「真菌症・原虫症・細菌感染症・ウイルス感染症・悪性腫瘍」など23の合併症のいずれかを発症した状態を指す。
エイズを発症した場合の平均余命は2~3年と言われている。

 

HIVは性感染症として感染の多くは性行為により、感染経路のほとんどは粘膜感染によるが、「注射器・注射針の使い回し」「HIVが存在する血液の輸血」「医療現場・献血等での針刺し事故」などによる血液感染や、HIVに感染した女性が妊娠中や出産時の出血、母乳から赤ちゃんへ母子感染するケースもある。

 

HIVは非常に弱いウイルスのため、感染直後には発熱、咽頭痛、咳、鼻水、倦怠感、下痢、吐気、食欲不振など風邪やインフルエンザと似たような症状が出る。
ただ、感染者全員に症状が現れるわけではなく、無症状のケースもある。

 

感染から2~4週間でこのような症状を発症するが、5年から10年の症状のない潜伏期間に入る。
このため、HIV感染を発見するのは難しいが、エイズ発症前の早期発見で治療を行えば、感染者の平均余命は非感染者と同じ程度になると言われている。

 

ところが、HIV感染を見つけるのが難しいため、エイズを発症して、初めてHIVに感染していたことがわかる「いきなりエイズ」のパターンも多い。
今回、沖縄県で問題となっているのは、この「いきなりエイズ」だ。

 

沖縄県の22年のHIV感染者を含むエイズ患者の発生人数は19人で、21年よりも7人減少しており、14年の33人と比べても多いわけではない。
全国でも、13年には1586人の報告があったが、22年には892人にまで減少している。
ただ、沖縄県の人口10万人あたりのエイズ患者報告数は、全国で最も多くなっている。

 

問題となっているHIV感染者に占めるエイズ患者の割合では、22年にエイズ患者が52.6%にのぼり、02年以来20年ぶりに50%を超えた。
21年には38%だったので、急激にエイズ患者の割合が増加している。
22年のエイズ患者の割合全国平均は約30%なので、沖縄県は非常に高いことがわかる。

 

22年の19人のエイズ患者の男女別では、男性が19人、女性はゼロだった。
13年以降の状況でも、女性は多くても2人にとどまっており、エイズ患者のほとんどは男性となっている。

 

22年の男性患者の年代別では、30代、40代が多いが、21年と22年の比較では40代が大幅に減少しており、20代から50代までほぼ横並びで患者が発生している。

 

22年の男性の感染経路では性的接触が89%を占めており、このうち95%がにほんじん、5%が外国人となっている。

 

沖縄県では、「いきなりエイズ」が増加したことについて、新型コロナウイルス関連の業務で県内の各保健所がHIV検査を休止したことが背景にあると分析しており、6月から各保健所のHIV即日検査の日程を増やし、夜間・休日にも拡充して実施している。