1月17日、肺炎のため東京都内の病院で逝去した漫画家・水島新司さん(享年82)。
『ドカベン』『野球狂の詩』『あぶさん』など、野球漫画で人気を集めた。
自身も大の野球好きだというが、その原点を、2002年に語っていた。
「俺の野球狂の原点は、少年時代に野球が好きなのにできなかったことにあるね。
家庭が貧しくて働かなきゃいけない。
魚を積んでリヤカーを引いてね。
中学3年のときは3日しか学校に行ってないけど、趣味で描いてた漫画が入選して。
普通に学校に行ってたらこうはならなかった。
人生そんなもんだよ。
自分が意図せずコースから外れてもベストを尽くせば絶対何かある。
それが俺にとっては漫画だったと思う」
そんな水島さんが、野球漫画だけを描き続けたのには、ある想いがあったという。
「1958年に漫画家デビューしたときに、『絵がうまくなったら野球漫画だけで勝負しよう』と。
自信がついてきたのは『男どアホウ甲子園』(1970年)からで、『向こう3年は野球漫画以外は描かない』と目標を立てた。
そう心を鬼にしたら『ドカベン』『野球狂の詩』『あぶさん』が2、3年後に続けて生まれてね。
このころから仕事をしているという観念がない。
こんなに楽しんで金もらっていいのかなって。
野球やってるより漫画描いてるほうが楽しいんだから。
8年ぶりに『ドカベン』(プロ野球編)が始まったのは清原和博選手の『山田をプロへ』というひと言のおかげ。
恩人ですよ。
でも巨人に行ったときはショックで『この裏切者』ってね(笑)。
やっぱり俺の作品がいいか悪いかはキャラクター次第。
ドラマありきじゃない。
キャラクターがストーリーを動かすんですよ。
ホントに漫画と野球はいくらやっても飽きないね。
夢? 2人の息子に野球選手と漫画家になる夢を託したけども叶わずだったから、孫が岩鬼や山田を使って漫画を描く“ドカベン孫編“。
これがオレの夢ですよ」
シリーズ合計205巻に達した『ドカベン』の完結時、「たしかに46年間は長い年月です。しかし長さは感じませんでした」と読者へ思いを綴っていた水島さん。
どこまでも、野球と漫画が好きな人生だったのだろう。