キックボクシングで42戦無敗の戦績を誇り「神童」と呼ばれ、プロボクシング転向を表明した那須川天心が9日、東京・後楽園ホールで、日本ボクシングコミッションの6回戦に出場可能なB級でプロテストに一発合格を果たしたことを、各メディアが報じた。

 

天心は、筆記試験では100点満点中、97点の高得点をマーク。
その後行われた3ラウンドのスパーリングの相手は、いきなり日本バンタム級1位の南出仁だったが、南出に左ジャブを的確にヒットさせ、軽快なフットワークで相手の強いパンチをほぼ受けることなく終了。
終了後もリングでスピード感あふれるシャドーをこなして、体力面もアピールした。
全行程終了後、合格が発表されるや「何かに合格するのはうれしい。受験は高校以来なので、すごく新鮮」と喜んだという。

 

所属する帝拳ジム・本田明彦会長は「戦うためのすべてが備わっている。1年以内に日本タイトルに挑戦させたい」と話したとのことで、4月がプロデビュー戦となる見込み。
プロテストはスーパーフェザー級のギリギリとなる58キロで受験した天心だが、狙う階級はバンタム級(53.52キロ以下)かスーパーバンタム級(55.34キロ以下)だという。

 

「スーパーバンタム級は、バンタム級で4団体統一を果たした井上尚弥が階級アップで転向を表明したばかり。
最短で世界王者を狙うのであれば、バンタム級がベストなのでは。
とはいえ、井上とはジムが違うので、天心と井上が世界戦を戦えば話題性と注目度はとんでもないことになりそうだ」(スポーツ紙のボクシング担当記者)

 

プロテストにもかかわらず、その注目度は高く、約100人の報道陣が集まり、キック時代の天心には見向きもしなかった民放各局のニュース番組までもがスポーツコーナーで天心の合格を取り上げた。

 

「ほかの競技から転身したボクサーのプロテストがここまで話題になったのはかなり異例。
昨年6月、東京ドームで行われた武尊戦に勝ち、無敗を守ったおかげでここまで注目を浴びたが、今回の日本ランク1位を相手取ったスパーリングも、将来性を大いに期待させる戦いぶりだった」(同)

 

ここ数年、プロボクシングといえば、井上の世界戦、ロンドン五輪金メダリストでプロに転向した村田諒太とゲンナジー・ゴロフキンのビッグマッチなどは、放映権料が高騰してしまったこともあり、ことごとく地上波では放送されなかった。
しかし、天心の今後の試合をめぐっては、各局が独占放映権の争奪戦を繰り広げることになりそうだという。

 

「もともと、帝拳には日本テレビが食い込んでいたが、一方で天心が出場した格闘技イベント『RIZIN』の試合を放送し、村田の世界戦も放送していたフジテレビも簡単には引かないだろう。
また、TBSもかつて亀田兄弟を売り出し、天心が出場していた格闘技イベント『RISE』の試合映像を深夜帯ながら放送。
テレビ朝日は新日本プロレスを放送中なのでさすがにボクシングはやらないだろうから、日テレ、フジ、TBSの三つ巴での放映権争奪戦が繰り広げられそうだ」(ボクシング業界関係者)

 

どの局が勝者になるかが注目される。