現行の健康保険証を2024年秋にも廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替えるとした13日の政府発表に対し、SNS(ネット交流サービス)を中心に疑問の声が相次いだ。

 

任意のはずのカード取得が事実上義務化されることへの反発は根強く、国葬同様に意思決定経過に疑問を呈する投稿が続出。
背景には情報を一元化されることへの懸念があるとみられ、政府への不信感が横たわる。

 

「利便性が高まる」。
河野太郎デジタル相は13日の記者会見で「マイナ保険証」への切り替えを発表し、そのメリットを強調した。
だが、医療機関の受診に欠かせない健康保険証とセットで切り替えを迫る仕組みは、カードを取得するか否かを個人の判断に委ねてきた制度を事実上義務化に転換することを意味する。

 

これに対し、SNS上などでは激しい反発が見られ、会見が開かれた午前10時以降に投稿が急増。
「マイナンバーカード」は一時トレンドのトップになった。
2013年5月に成立したマイナンバー法は「住民基本台帳に記録されている者の申請に基づき、その者に係るカードを発行するものとする」(16条2項)と明記しており、その任意性を問題視する投稿が目立った。

<任意といいながら事実上義務化する政府のやり方は卑劣>

<カード取得は法律で任意性が担保されており、その原則がないがしろにされるのは「法治国家」として許されない>

<任意にもかかわらず、普及しないからと事実上強制は理不尽>

また、目を引いたのが政府の決定プロセスを疑問視する投稿だ。

<こんな重要なこと議論も精査もなく「もう決めちゃった」で済む話じゃない>

<国会でいつどのような審議をしたのか>

 

実は、マイナンバーカードの普及を目指し、現行の健康保険証を24年度中をめどに原則廃止する方針は6月に閣議決定された経済財政運営の指針「骨太の方針」で打ち出されていた。

 

しかし、今回の事実上義務化の発表は唐突感を持って受け止められたようだ。
9月の国葬実施が国会での議論を経ずに閣議決定されたことへの不信感も重なり、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令の請求は「慎重に判断」(松野博一官房長官)とした政府の姿勢を引き合いにこんな皮肉めいた書き込みもあった。

<マイナ保険証と国葬は閣議決定で決め、解散命令の請求は「慎重に判断」なのですね>

 

情報漏えいの懸念を巡って、政府は「マイナンバーカードのICチップには税や年金の情報や病歴などプライバシー性の高い情報は記録されず、それらの情報はカードからは判明しない。記録される情報は、券面に記載されている情報や公的個人認証の電子証明書などに限られる」と説明。
「制度、システムの両面でさまざまな安全管理措置を講じており、政府が一元管理することもない」とする。

 

しかし、かねてあった懸念の声は河野氏の会見後に再び強くなった。

<廃止すべきは保険証でなく、情報漏えいなど危険性が高いマイナンバーカード>

<国民は一方的に情報を握られる>

 

こうしたSNS上の強い反応の裏には、そもそも政府への不信感があるとみられ、カードの普及が進まない一因となっているようだ。

 

22年10月11日時点のマイナンバーカード交付率は49・6%。
デジタル庁が発足した21年9月1日時点の37・6%から10ポイント以上増えたものの、「23年3月までにマイナンバーカードをほぼ全国民に行き渡らせる」という政府目標は遠い。

 

ただ、政府としては今回の発表に加え、今年12月末までの申請者を対象にカード取得などで最大2万円分のポイントが受けられる「マイナポイント第2弾」により普及を加速化させたい考えで、SNS上では河野氏の会見を好意的に受け止める反応も見られた。

<マイナポイントで得した気分>

<まとめられるものは、さっさとまとめてほしい派なのでマイナンバーカードへの集約は賛成>

<運転免許証を持っていないので、ありがたみしか感じていない>

 

とはいえ、どうしてもカードを取得したくない人はどうなるのか。
24年秋までにカードを取得していない人の保健医療について、デジタル庁幹部は「そういう方にも(取得への)ご理解をいただくのが大方針ですが、持っていない人への対応はしっかりやりたい」と述べるにとどめており、今後の検討課題となりそうだ。