7月11日。参院選で自民党から立候補し初当選した元おニャン子クラブの生稲晃子氏が自身のツイッターでテレビ東京の選挙特番『池上彰の参院選ライブ』の放送内容を受け、同局のプロデューサーとMCの池上彰に抗議文を送付したと発信した。
いったい何が起こったのか。

 

10日の『参院選ライブ』では、生稲氏が当選直後、全局のインタビューに応じなかったことについて、生稲氏の陣営関係者の談として「生稲さんは国会議員としての資質、勉強が圧倒的に足りない」という理由で出演しなかったと紹介。
池上彰氏は「インタビューのやり取りに自信がないのかもしれませんけど、それでも何かを答えるというのが国会議員になれば責任が出てくるのではないかと思います。そういう意味ではとても残念です」と苦言を呈した。

 

生稲氏はツイッターで出した抗議文で「マスコミ各社共同インタビューを受けています」としたうえで、支持者への挨拶のため時間の都合で中継には対応できなかったと反論している。

 

生稲氏を支援していた自民党の川松真一朗都議も11日にツイッターで《上から目線で見解を語り世論を煽る手法はやめた方がいい。マスコミ対応責任者の私はテレ東に取材されていないのは事実》と怒りの感情を滲ませている。

 

食い違う言い分の行方は──事実を確かめるべく、テレビ東京に問い合わせいくつか質問をしたが、「放送した内容は、弊社の記者が取材で得た情報を元にお伝えしたものです」との回答だった。

 

“勉強が圧倒的に足りない”と紹介され、それに対し反論をみせた生稲氏の陣営だがこのゴタゴタを報じたネットニュースのコメント欄などでは、生稲氏に対して批判的な論調が多くみられた。

《当選することだけが目的だったのかもしれないけど、選ばれた以上は国民の代表として自身の言動に責任を持つ意味でも自分の言葉が必要だったんじゃないかなと思う》

《では今からでもインタビューに答えればいいのでは?初当選の感想とか国会議員になったらこういうことをしたいとか国民は聞きたいと思います》

 

やはり、“タレント議員”に対する世間の風当たりは強いのか。
SNSでも『東京新聞』が掲載した“コロナ対策の緩和”についての質問が、同じ自民党の朝日健太郎氏の回答と「ほぼ全く同じ内容」と指摘を受けてプチ炎上もした。

 

そもそも、生稲氏が出馬したきっかけはというと、

「ひとり娘が高校に入学し、ちょうど手が離れたタイミングに自民党から出馬を誘われたと聞きます。
選挙期間中は慣れない演説を終えると、押し寄せてくるアイドル時代のファンとの写真撮影に応じていましたよ。
6月に入ってからはスタッフが熱中症になるほどの猛暑のなかでしたので、生稲さんもクタクタ。
人目につかないところでは肩を揉むような仕草でグッタリしていました」(政党関係者)

 

ゆえに、「出馬を決めてから選挙活動をするまで、すべてが急なスケジュールで周囲が期待する議席獲得のプレッシャーで常に不安な様子だったと聞く」(同政党関係者)という。
そんなドタバタ劇のなかで、あるトラブルも起きていた。

「生稲さんは出演していた通販番組『痛快!買い物ランド ショップ島』を放送する『東京テレビランド』から損害賠償を求めて訴訟を起こされてています。
出馬がきっかけで生稲さんの映像を使えなくなったからです。
親会社は会社のHPに《訴訟提起に関するお知らせ》として訴える旨をしっかりと記した。
相当な怒りを感じますね」(BS放送関係者)

 

『ショップ島』は1993年に放送を開始した老舗のテレビショッピング番組。
現在は山田邦子、彦摩呂をメインに据えているが生稲もメインキャストのひとりだった。
公職選挙法、民放連の放送基準などにより立候補したタレントは放送に出演しないのが普通だ。
6月6日に東京地方裁判所で提訴され、所属事務所の『尾木プロダクション』を相手取り、900万円の支払いを求めている。
最大2000万円〜4000万円に増額する可能性があるとも。

 

『東京テレビランド』の親会社である『ジェイ・エスコムホールディングス』の広報担当に話を聞いた。

 

──生稲氏が出馬するまでのトラブルの経緯は?

「『尾木プロダクション』さまから3月30日に出馬しますとの連絡がありました。
当社からは“いきなり放送で素材が使えなくなると損失が増える可能性があるので、できる限り(出馬)表明は遅らせていただきたい”というお願いをしていました。
なるべく公示日に近い日程での発表のほうがすでに収録を終えたものに関しては放送できますし、その間、スポンサーの方との交渉も余裕ができるかたちになるからです。
しかし、先方からは“4月6日に公表する”とのお話がありました」 

 

『ショップ島』ではひとつの番組を全国のBSやCS、地方局などさまざまな媒体で放送される。
’16年から出演し続けている生稲氏は番組にとって重要なポジションを担っていたという。

 

「具体的な出演回数は申し上げられないのですが、かなり多いという話にはなっております。
商品によってですが、1回収録をいたしますとそれを何回かにわけて1年間くらい放送できます」

 

──なぜ900万円の支払いを?

「あくまで仮定の話ですが、何も対処をせずに番組すべてがなくなるなどしたら、億(単位)に近い損失があったとの概算もあります。
それを当社と尾木プロのご担当者さまと間でスポンサーさんを回るなどして対処しました。
生稲さんの出演シーンだけ削除したら大丈夫”とおっしゃるお客様もいらっしゃいましたね。
そういった取り組みもあって実質的な4月ぶんの損害額は900万円にまで減らせました。
今後は最大4000万円くらいになる可能性もあります」

 

──今後の裁判の流れは?

「8月中に第一回期日が予定されているとは聞いています。
当社といたしましては生稲さんというよりはプロダクション尾木さまに対して被った実損分について負担をしていただきたく訴えさせていただいております。
当社と尾木プロダクションさまの代理人同士でやり取りをしております」

 

──生稲氏が当選されたお気持ちは?

「あくまでこちらは当社と尾木プロダクションさまの問題ですので、特に現状で生稲さんに何かコメントするといったことはございません」

 

尾木プロダクションにも今回の裁判沙汰について質問状を送ったが、「当件については当社顧問弁護士に一任しておりますので当社からコメントすることはありません」とのみ回答が。

 

出馬しても当選してもトラブル続き。
争うばかりが国会議員の仕事ではないのだけれど……。