NiziUが2020年12月の日本デビュー以来、初めて韓国での活動を行った。
7日と8日にソウルで行われた「KCON2022」の8日の公演に登場。
同日は5枠のアーティストが出演するなかの一つとして屋内ステージに立ったのだ。
それは、彼女たちと韓国メディアの初めての出会いでもあった。
その報道ぶりがどうだったのかというと…「写真中心の報道」がほとんどだった。
主催者側が設けたフォトタイムに登場した際の写真を掲載。
そこに見出しをつける、という。
何せ韓国メディアの間ではグループの事前情報はあまりない。
Niziプロジェクトは放映されていないし、デビュー後の紅白歌合戦出場などの活躍ぶりも大きくは報じられない。
そういったなかでも、なかなか凝った見出しがいくつかあった。
初対面だからこそ「ああ、そう見えるんだ」という驚きもある。
ただし、韓国での第一歩はかなり「静かなもの」だったと言わざるを得ない。
現場でのNiziUの写真をアップした各メディアの記事は合計で少なくとも500以上あった。
他のグループと同様だ。
ただし、NiziUに関してはじつのところほとんどが「かわいい(キゥイヨプタ、イェップダ)」「微笑み」といった平易な表現だった。
キャラクターがまだまだ伝わっていないことを思わせた。
例えば先に韓国でスタートを切った宮脇咲良などは「細いウエスト」などのイメージが伝わっており、こういった写真報道メインのイベント時にはこれに関する表現も多く出ている。
また、グループ全体の紹介を報じたのは1媒体のみだった。
これは当日の取材形式が影響している面もあるだろう。
写真撮影時にはメンバーが日本語で「対面ライブの楽しみ」などを口にするシーンもあったが、韓国メディアでは記事にならず。ショーケースのように質疑応答でじっくりと話す時間があればコメントとともに報道が深まったかもしれない。
とはいえ「静かだった」のはこの写真報道ばかりではない。
今回、韓国最大手ポータルサイト「NAVER」上でNiziUの関連記事が掲載されたのは4月18日以来だった。
およそ20日前に「ASOBO」の公式動画がYouTube上で再生回数1000万回を超えたという情報が伝えられて以来だ。
その他、さらっと5月6日に今回のKCONソウルの出演者の一員として報じられた程度だ。
また、韓国語でのSNS(ツイッターとインスタ)、ブログ、ニュース記事での言及量(どれほど話題になっているか)も大きな反響だったとは言い難い。
このビッグデータを提供するサイト「SomeTrend」での結果は以下の通りだ。
合計の言及量は「NiziU」が「9756」、韓国のニュース表記で多い「ニジュー(니쥬)」が「4440」だった。
また両者と合わせて、どんな言葉が話題になっているかという「関連キーワード」の結果はこうだった。
「NiziU」…1位~3位はすべて「イベント関連(つまり本人たちのことではない)」。
4位にメンバー名の「アヤカ」が入った。
「ニジュー(니쥬)」…「考え」。
イベントのオフィシャルツイートに含まれた言葉(下記)。
これが多くリツートされた結果がトップの2381。
その他、メンバーの写真を丹念にアップしたメディア「スターニュース」のコーナー名「HD」も上位に入った。
メンバー別に見ると「リマ」が最も多かった。
日本での華々しいスタートとは対照的なのは確かだ。
理由は筆者自身が2021年2月にも韓国メディアに取材した通り、明確。
「韓国でNiziプロジェクトなどが放映されておらず、どういった存在なのか伝わっていない」。
良いも悪いもなく、韓国ではここから認知度を高めていくべき存在なのだ。
日本のグループだから反日感情から嫌われているということでもない。
なんなら今回もマヤのピースのポーズをわざわざ日本式に「チーズ」と見出しをつけて報じた媒体もあるほどだ。
仮に今回の韓国での反応を週刊誌に記していたのなら「NiziU韓国で惨敗!」というところで締めくくっていただろう。
そういう話だけでもない。
NiziUが面白いのは「前例がない」取り組みだから、あれこれと考えられることではないだろうか。
NiziUの公式サイトでの枕詞は「9人組グローバル・ガールズグループ」。
またJ.Y.ParkはNiziUについて「JYPの正統派グループのひとつ」とも。
だとしたら「世界」の第一歩たる韓国でのスタートが非常に静かだった点は、当初の予想を下回るものだ。
また「日本のトップグループ」の韓国初登場があまり騒がれなかったという点も少し残念。
なにせ紅白歌合戦出場2回、2020年の「Yahoo!検索大賞2020」アイドル部門賞などの実績があるのだ。
ちなみにかつてKARAは日本での「紅白出場歴」が韓国でもキャリアに箔をつけていたものだが。
とはいえ、これらのことは誰もやってこなかったことなのだ。
日本のグループが韓国の地で活動する、という流れはほぼ初めて(遠い昔「少女隊」がステージに上ったことがある)。
ましてや韓国の事務所所属の日本のグループが、だ。
前例と比べようがない。
NiziUの日本での歩みが少しでも韓国で再現されることを期待しがちだが、それをやったグループもない。
何より韓国での公式メジャーデビューはまだ果たしていない。
本当の評価は韓国で楽曲を発表し、ショーケース(新曲発表会)で喋り、音楽番組に出続けて、バラエティ番組でイジられて、その後に下されるべきところだ。
今回のKCONでは日本でのヒット曲「Make you happy」の韓国語版を歌ったのだそう。
小さな一歩を記したのだ。