BIGBOSS新庄剛志監督に率いられる最下位の日本ハムが西武に0-5で完敗を喫し、開幕から33試合目にして早くも自力優勝の可能性が消滅した。
敵地ベルーナドームで6日に行われた6回戦で、試合中盤までともに無得点の接戦を演じるも6回に4つの四死球を与えて2点を献上。
7回に犠飛で追加点を奪われ、8回には山川穂高にリーグトップを独走する12号2ランを浴びて万事休した。
今シーズン4度目の4連敗で借金は最多の「13」に膨らみ、首位・楽天とのゲーム差も最大の「14」に広がった。
日本ハムが残り110試合で全勝しても、楽天が日本ハム戦以外のカードですべて勝てば勝率で上回れないため、自力優勝の可能性が消滅した。
中盤まで勝利の可能性を抱かせる戦いを繰り広げながら、終わってみれば西武に5点差をつけられての今シーズン6度目の零封負け。
4度目の4連敗で借金が最多の「13」に膨らんだ最下位の日本ハムへ、さらに追い打ちをかける一報が飛び込んできた。
時をほぼ同じくして、首位を快走する楽天がオリックスに逆転勝ちを収めて8連勝をマーク。
ゲーム差が最大の「14」に広がった瞬間に、開幕からわずか1か月あまり、まだゴールデンウィークの段階で日本ハムの自力優勝の可能性が消滅した。
現時点で10勝23敗の日本ハムが、楽天との16試合を含めた残り110試合で全勝すれば120勝23敗で勝率は.839となる。
しかし、21勝6敗1分けの楽天が日本ハム戦以外のカードで全勝すれば、120勝22敗1分けで勝率は.845となる。
あくまでも机上の計算であり、秋まで続く長丁場の戦いで今後に何が起こるかはわからない。
スポーツ各紙の報道によれば、現時点において自力では勝率で楽天を上回れない状況が生じた心境を試合後に問われたBIGBOSSは、こう返したという。
「そんなのもう、もう。
選手も自分のことで精いっぱい。
個人個人がその打席で結果を出して、ガチガチの来年のレギュラーを取りにいくために必死でやっているとこだし、俺も必死で選んでいるとこ。
俺には考えがあるから。今後のためにね」
来シーズン以降を勝負の場と定めながら、目の前の一戦一戦に臨んでいるのが新生・日本ハムとなる。
これは就任会見で今シーズンの優勝を「狙わない」と仰天宣言した、BIGBOSSのスタンスとも一致している。
例えば打順はここまでの33試合で、すべて異なる顔ぶれで臨んでいる。
1番打者は10人を、4番打者は11人をすでに数える。
クリーンアップは近藤健介-清宮幸太郎-石井一成が2度あるだけで、残る31試合で31通りが組まれてきた。
選手たちの競争心を煽りながら適性を見極めている証となるが、数字上ではある傾向がはっきりと表れている。
チーム本塁打31本はリーグ最多ながら、一転して同得点104は4位。
タイムリー欠乏症は西武戦での敗因となった。
3回は西武内野陣の連続エラーで一死一、二塁と絶好のチャンスをもらった。
しかし、前日の楽天戦に続いて1番に指名されたドラフト3位ルーキー、水野達稀(JR四国)が空振り三振。
続く野村佑希もセンターフライに倒れた。
5回には一死から7番・石井が、チーム初安打となる三塁打を右中間へ放った。
打順を考えればベンチとして動いてもいい場面だったが、続く今川優馬と梅林優貴があっけなく見逃しの三球三振に倒れた。
2点を先行された直後の7回には、ヒットとエラーで二死一、二塁のチャンスをもらった。
再び打順が巡ってきた梅林へさすがに代打が送られたが、一軍で放ったヒット数がわずか「4」の田宮裕涼は、最後の力を振り絞って威力のあるボールを投げ込んできた西武のエース、高橋光成の前に平凡なセカンドゴロに打ち取られた。
3日の楽天戦で現時点における最後のタイムリーを放っている近藤健介が、4日の試合前練習で右脇腹を痛め、右内腹斜筋肉離れで復帰まで約8週間かかると診断された。
打率.294を残すヒットメーカーが離脱した状況は、若手へ大きなプレッシャーをかける。
水野も野村も今川も、さらには5日の楽天戦で自身初の2打席連続アーチを放ち、打順を6番から今シーズン初の3番となった清宮にも少なからず影響を与えたはずだ。
試合に勝ってこそ若手選手は経験を成長への糧に変えられる。
しかし、ベンチが動いたのは初回二死から、四球で出塁した清宮が仕掛けた盗塁だけだ。
その盗塁も失敗。
その後は可能性を感じさせない攻撃に終始した。
今季の先発ピッチャーも西武戦を託された4年目右腕、生田目翼で早くも13人目。
現在は守護神を担うドラフト8位ルーキー、北山亘基(京産大)や昨シーズンのリーグ最優秀セットアッパー、堀瑞輝がオープナーとして先発したソフトバンクとの開幕3連戦はともかく、打順同様に「必死で選んでいるところ」となるのだろう。
しかし、実情はどうか。
チーム防御率4.17、同失点141はともに断トツのリーグワースト。
投手陣の崩壊が、黒星を重ね、自力優勝の可能性が早々に消滅した一因となっている。
生田目は最速155kmのストレートを軸に、全身を躍動させるフォームから力強いピッチングを披露した。
昨年10月に先発して一軍初勝利をマークした西武打線に5回まで二塁を踏ませず、わずか47球で2安打と沈黙させた。
しかし、6回から急に制球が定まらなくなる。
先頭の8番・山田遥楓にこの試合で初めてとなる四球を与え、二塁へ送られたピンチで途中出場していた1番・戸川大輔に死球、2番・オグレディに再び四球と無安打で満塁としてしまった。
続く外崎修汰に一、二塁間をしぶとく割られ、先制点を献上した段階で生田目は68球で降板した。
2番手の左腕・上原健太が山川を打ち取った二死後に、5番・中村剛也に押し出し四球を与えた瞬間に勝負はついたと言っていい。
生田目は試合後に、山田への四球をとりわけ悔やんだ。
初回から飛ばしすぎた反動もあったのだろう。
それでも、今シーズンの一軍初登板だった事情や0-0の状況を踏まえれば、急にボールがばらつきだした時点で交代させるのもありだったのではないか。
BIGBOSSとしては、生田目が自ら招いたピンチを摘み取れば自信につながると考えていたのだろう。
実際、5月に入って自身のインスタグラム(@shinjo.freedom)を更新したBIGBOSSは、100万人を超えるフォロワーへこんな言葉を発信している。
「負け試合を無駄にしないこと。
必ず次に繋がる何かを掴むこと。
これが次に生きてくる」
結果を追い求める采配と、成長を促すそれとはほとんど両立しない。
胸中に募らせる歯痒さの存在を認めた上で、BIGBOSSはメディアに対して「歯痒さがなかったらね、やってても面白くないし」と語り、さらにこう続けたという。
「これからですよ。
水をあげていきなり花が咲くわけないんだから。
少しずつみんなを成長させていきながら、いまは辛抱するとき、俺は」
ファンは BIGBOSSに導かれるごく近い将来の新たな姿を楽しみにしながら、同時に目の前の一戦で輝きを放つ日本ハムも望んでいる。
今日7日の先発は、昨シーズンにチーム最多の12勝をあげながら今シーズンは白星なしの4連敗を喫している上沢直之。
エースが勝たねば反撃の糸口もつかめない。