日本ハムで同僚選手に暴力を加え出場停止処分を受けていた中田翔内野手(32)が20日、巨人に無償でトレードされたことが早くも球界内で波紋を広げている。
今月11日に日本ハムから一、二軍全試合の出場停止処分を科されたにも関わらず、巨人移籍発表直後に「処分解除」が発表されたからだ。
この対応に早くも他球団からは「いくら何でも甘過ぎないか」と不平不満の声が上がり始めている。
20日に都内の巨人球団事務所で行われた中田の移籍会見。
冒頭から本人は神妙な面持ちで反省と謝罪の言葉を並べた。
「今回、本当に皆さんに迷惑をかけてしまったこと、本当に反省しています。
(暴行を加えた)本人にももちろんそうですし、ファンの皆さんに対しても裏切ってしまったということに対してすごく後悔だったり…。
本当に反省しています」
4日のエキシビションゲーム(DeNA戦)前に同僚への暴行が発覚。
事態を重く見た球団側は11日、中田に対し無期限の一、二軍全試合の出場停止処分を科した。
以来、本人は謝罪会見などを行わず公の場に姿を現すことがなかったため、今回の会見は暴行被害者や心配をかけたファン、球界関係者に筋を通したように見える。
ただ、問題は謹慎処分の期間。今回の電撃トレードにより日本ハムが科していた無期限謹慎処分は解除されることが明らかになったのだ。
日本ハムが謹慎を言い渡してからまだ9日間しかたっていない。
実際に中田は会見後にさっそく巨人のユニホームに着替えて一軍練習に合流。
元木ヘッドコーチは21日以降について「(一軍)登録はするでしょうね。スタメンなのか試合(出場)じゃないのかは分からないですけど」と話し、電撃出場の可能性も示唆した。
日本ハム独自の処分だったとはいえ「トレードで謹慎解除」は受け入れられるのか。
あるセの球団幹部に聞くと「ルール違反ではないが甘い対応と言わざるを得ない」と思いの丈をこう続けた。
「何か悪行を犯した人間に受け皿を与えるのは必要。
むしろ反省した人間にそういった場を提供するのは当然だと思います。
その意味で巨人軍の今回のトレードが悪いとは言いません。
ただ、日本ハムが無期限謹慎処分を下してまだ10日もたっていない中で、謹慎を解除していいのか、という疑問は残る。
暴行事件を起こした事実は消えないわけですからね。
会見で本人が反省の弁を繰り返したとはいえ、日本ハムは今回の事件を重く見たうえで無期限謹慎処分を科したのだと思いますから。
巨人にトレードされたから『じゃあ謹慎処分はなかったことに』というのは世間一般には受け入れられないのではないでしょうか」
別の球界OBも突然の謹慎解除に憤りを交えながらこう話す。
「『トレードで無期限謹慎解除』という今回のようなケースが容認されると、今後無期限謹慎処分という処分自体が軽視される恐れがある。
本人は猛省しているのかもしれないですが、処分は処分ですから。
チームが代わってもそこは厳しく一定の謹慎期間を設けるべき。
中田の行った同僚への暴行行為は本来、解雇されてもおかしくない事案ですからね」
今回のトレードに至った経緯について、巨人の大塚淳弘球団副代表は「過ちを犯さない完璧な人間はいない。(日本ハムの)吉村GMから電話があって、『(中田が)涙を流して謝罪した』と。その中で反省していたし、野球を辞める覚悟があった」と説明。
そのうえで「ジャイアンツがもう一度、中田選手にチャンスを与えたい」と手を差し伸べた理由を明かしたが、今回の電撃移籍で中田の愚行は清算されるのか。
新天地での対応が注目される。