去年開催された「第35回童謡こどもの歌コンクールグランプリ大会 こども部門」で、「犬のおまわりさん」を歌い、2歳5ヶ月(当時)の最年少で銀賞を受賞した村方乃々佳ちゃん(むらかた・ののか、3歳)。
かわいらしい歌いっぷりが話題を呼び、今年5月にはCDデビュー。
さらには、ゴキブリ駆除剤や除菌スプレーのCMにも起用されるなど、大活躍中です。

 

そんなののちゃんが、6月7日放送の『しゃべくり007』(日本テレビ)に出演し、あいみょんの「裸の心」などを披露。
放送後はTwitterで「ののかちゃん」がトレンド入りしたぐらい話題になりました(番組では「ののかちゃん」と表記)。

 

童謡と同じように、たどたどしくも朗々と歌うののちゃんに、「可愛い」「字も読めないのに歌詞を覚えられるとは凄い」と感動する声が多くを占めた一方で、違和感を覚える人の意見も見受けられたのです。

「歌詞の内容わかってないだろうに」
「3歳児にあいみょんを無理やり歌わせて何したいんや」
「ののちゃんが楽しんでやってるならいいけどさ…」
「パフォーマンスするほど可哀想に思えてくる」

等々。

 

「裸の心」を歌う動画は、もともと公式Youtube「ののちゃんねる」に3月27日にアップされており、160万回再生を超えています。

 

「犬のおまわりさん」直後にも、あまりのメディアへの露出っぷりに、“カネのために子供をこき使うな”的なコメントが多くあがり、改めて子供と芸事の関係性について考えさせられました。

 

確かに、「犬のおまわりさん」は微笑ましいし(子供らしさを誇張するよう仕込まれている部分は滑稽ではありますが)、その手の芸風がウケるのが世の常ですから、それでビジネス展開すること自体に特に問題は感じません。
旬が過ぎれば、飽きられるだけの話です。

 

しかし、問題は3歳そこそこの子供にあいみょんを歌わせるグロテスクな状況を黙認していることなのではないでしょうか。

 

あいみょんのラブソングは、性的な匂わせを含んだ歌詞が特徴で、「裸の心」も例外ではありません。
<この恋が実りますように 少しだけ少しだけ そう思わせて>とか、<どんな未来も受け止めてきたの 今まで沢山夜を越えた>とかの歌詞を、3歳が歌うのは面白い。
けれども、その面白さは、詞の実像からはかけ離れたところで生まれるものですから、そこでは不幸にも歌が踏み台になってしまう。

 

そうした内容を理解し実感することができないという前提を免罪符に、乳幼児の声で言葉のうわべをなぞらせる気味の悪さは、率直に言ってえげつない。
“どうせ分からないんだから大丈夫”という責任の放棄が、見世物としての強みに直結してしまっているので、なんともタチが悪いのですね。

 

たとえば、3歳の女の子がジェシーJの「Bang Bang」を歌う動画をアップしたら、どう思うでしょうか?
あいみょんはそこまでわかりやすくないにしろ、やっていることに変わりはないわけです。

 

「裸の心」をののかちゃんが自分で覚えたのか、親を含めた周囲の大人が教えたのかはわかりませんし、当然子供が大人の歌をうたってはいけないと法律で定められているわけでもありません。
近しい身内の中だけで「裸の心」を歌う程度なら、おませさんねぇ、ぐらいで済む話なのでしょう。

 

ただし、プロの歌手として常時不特定多数の目にさらされる3歳の児童となると、話は変わってきます。
あのかわいらしさも、たどたどしさも、元気のよさも、何も理解していない純粋さも、全て彼女の商品価値として公に消費されてしまう。
ののかちゃんの歌う「裸の心」は、好むと好まざるとにかかわらず、よこしまに値踏みされているのですね。

 

そんな傾向に歯止めをかけるためにも、大人がどこかで線を引いてあげないといけない。
「裸の心」に露骨な表現がないからこそ、余計に引っかかるのです。

 

同じ『しゃべくり007』の中で、小田和正の「たしかなこと」も披露したののかちゃん。
これも、あいみょんとは違った意味で、やはり何かがいびつなのでした。