《怪獣8号、いくらなんでもキコルがアスカすぎる》
こんなコメントがネット上で囁かれ、炎上している作品がある。
それは、集英社のウェブコミック配信サイト『少年ジャンプ+』で連載中の漫画『怪獣8号』だ。
隔週連載ながら、総合人気ランキングでは『SPY×FAMILY』や『チェンソーマン』と並ぶほどの人気で、来年にはアニメ化も決定している。
本作の舞台は、怪獣が突如発生し、日常が脅かされる架空の世界、日本。
怪獣を討伐した後の怪獣専門の清掃業者として働く日比野カフカを主人公とした物語。
幼いころから怪獣を全滅させるため「日本防衛隊」への入隊を志していたカフカ。
32歳の現在は夢破れ、怪獣死体の解体業者として働いていた。
後輩の市川レノから、もう一度入隊試験を受けるよう促され、決意を新たにするカフカだったが、謎の生物に浸食され、身体を怪獣化されてしまう。
怪獣8号でありながら、それを隠して防衛隊を目指すカフカだったが……。
主人公の32歳という年齢や、防衛隊に入りたいという夢破れ別の仕事に就業しつつも、再度夢に向かって努力する姿が、大人にも刺さるストーリーになっている。
そんな『怪獣8号』だが、最近のストーリー展開が映画やアニメが大ヒットした『新世紀エヴァンゲリオン』に似ているのではないか?と言われている。
《ずっと前から思ってたけどやっぱ怪獣8号ずっとエヴァ臭いんだよなぁ》
《既視感が半端ない》
《怪獣8号面白いけどちょいちょいエヴァみが深いしキコルがめっちゃアスカ》
ネットにはこれらの声が溢れているようだが……。
「防衛隊の期待の新人として登場する四ノ宮キコルの戦闘シーンが『エヴァ』の惣流・アスカ・ラングレー(式波・アスカ・ラングレー)のエピソードにとても似ていると言われています」と語るのは、アニメ誌ライターだ。
「そもそもキコルの登場シーンが仁王立ちで、アスカを彷彿させていました。
ツインテールにタイトスーツで、勝ち気な性格。飛び級で英才教育を受けた女の子というところも、アスカに似てますね」
作品のキャラクターが似ているというだけでは、そこまで炎上しなようにも思うが、この他にも“火に油を注いでいる”原因があるようで……。
「『少年ジャンプ+』内にあるコメント欄で、“エヴァ”という文字がNGワードになっているようです。
コメント欄で、“エヴァ”と入ってると投稿できないようですね。
それがまた一部の読者の反感を買っているようですね」(前出・アニメ誌ライター)
しかし、最近の作品では、過去の名作へのリスペクトから、オマージュすることはよくあることだと語るのは、映画誌編集者だ。
「映画も大ヒットし、アニメ化もされている漫画『呪術廻戦』ですが、この作品も漫画の『BLEACH』や伊藤潤二の『うずまき』、『HUNTER×HUNTER』などと似ているシーンがあると、比較検証されています。
その他にも、漫画『ゴールデンカムイ』では日本映画の『犬神家の一族』や海外のヒット映画『IT』、『ショーシャンクの空に』などのパロディが登場すると言われていますし、アニメ『チェンソーマン』のオープニングは『パルプ・フィクション』などの有名映画のワンシーンを掛け合わせた内容になっています。
これらも、過去の作品に対するリスペクトから来るオマージュでしょうね」
そもそもパロディやオマージュ、パクリの定義はどういったものなのか?映像制作会社関係者に聞いてみると。
「パロディは、元ネタから何らかの改変がなされ、ユーモアや風刺を効かせて表現したものです。
オマージュは尊敬する作品から影響を受けることによって、別の新たな作品を生み出すこと。
また、インスパイアは、尊敬する作家や作品に触発され、独自の行動や考え方も加えてオリジナリティのあるものを生み出すことです。
一方、パクリはオリジナルの作品をそのままコピーして盗むということです。
オマージュなのかパクリなのかの判断はなかなか難しいところですが、“元ネタの著作権を侵害していないか?”“許可を得られてるのか?”などが、判断のポイントになっていますね」
『怪獣8号』の作者である松本直也は以前、雑誌『ダ・ヴィンチ』の取材で、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に対して、
《放送時に主人公たちと世代が同じだったこともあり、多大な影響を受けました》(2021年10月号掲載)
と明かしている。
「作者本人が『エヴァ』へのリスペクトを語っていますし、『怪獣8号』が『エヴァ』に似てるのは、パクリではなくオマージュでしょう。
また、『怪獣8号』のアニメ化に際し、怪獣デザインとワークスを、『エヴァ』の監督である庵野秀明が代表取締役社長を務める、スタジオカラーが担当します。
パクリだと思われているなら、仕事を引き受けてもらえなかったでしょうね」(前出、アニメ誌ライター)
そんな『怪獣8号』だが、作品の熱烈なファンは多く、既刊9巻で国内累計発行部数は1000万部を突破し、海外からの注目度も高い。
アニメ制作は、SF作品には特に定評のあるProduction I.Gと、怪獣デザイン&ワークスはスタジオカラーが手がけるので、その映像にはいやがおうでも期待せざるを得ない。
今後の原作の展開や、来年のアニメ放映が待たれる。