容疑者が明かした犯行動機は統一教会への「恨み」、そして安倍晋三元首相と教団の「つながり」だった。
銃撃事件を機に政治家と宗教団体の不適切な関係が問題視されているが、芸能界では30年以上前から芸能人が“広告塔”に利用されることが社会問題化していた。

 

連日のように続報が伝えられる安倍晋三元首相(享年67)の銃撃事件。
殺人容疑で送検された山上徹也容疑者(41才)の供述が明らかになるにつれ、ある宗教団体との関連に注目が集まった。
統一教会(2015年に世界平和統一家庭連合に改称。本稿では統一教会と記述する)である。

 

統一教会の名が広く一般に知られるようになったのは1992年頃。
有名女優やスポーツ選手が相次いで入信を表明し、ワイドショーや週刊誌がこぞって教会の問題を取り上げた。

 

とりわけ日本中を驚かせたのは、女優として一線で活躍していた桜田淳子(64才)の告白だ。
韓国で行われる“合同結婚式”への参加を会見で表明し、見ず知らずの男性と結婚することも『価値観が一緒で人生の目的が同じ人が集まるのだから、不安はありません』と言い切った。
桜田は現在も脱会しておらず、夫婦仲も変わっていないという。

 

桜田と同じく1992年の合同結婚式に参加したのが元新体操選手の山崎浩子(62才)。
鹿児島県出身の山崎は高校時代に新体操を始め1984年にロス五輪に出場。
個人総合8位に入賞し、選手引退後は指導者、タレントとして活動していた。

「1988年のソウル五輪ではリポーターとしても活躍していましたが翌年、友人のすすめで教会のビデオ学習を受けたのを機に入信。
交際相手と別れ、たびたび韓国を訪れるようになり、1992年に合同結婚式が行われることを知ると自ら参加を望んだといいます」(前出・芸能関係者)

 

心配した姉や、キリスト教の牧師による説得は46日間にもおよび、山崎は脱会を決意した。
2004年から指導者として現場に復帰して、昨年の東京五輪でも新体操チームを率いた。
現在は東京とモスクワを拠点に指導を続ける山崎の心の支えは“推し活”だという。

「アイドルが好きで特にKis-My-Ft2の大ファン。
ツイッターでも頻繁に“推し活”について、楽しそうに綴っています」(新体操関係者)

 

山崎が代表を務める会社を訪ねたが、マネジャーらしき女性が「ここには来ません」、「(統一教会の)取材は受けません」と繰り返すばかりだった。

 

キャスターとしても活動するタレントの飯星景子(59才)は、脱会を巡って父で作家の故・飯干晃一さんと壮絶なバトルを繰り広げたことで知られる。
入信のきっかけは、統一教会のイベントで司会を務めたこと。
友人のすすめで統一教会の勉強会に参加した飯星は、教義より信者の人間関係に魅力を感じたといい、後にワイドショーでこう語っている。

「神様を通じてわかり合えるような、普通の友人関係とは違う、強烈で独特なものがあった」

 

霊感商法に関する悪い噂も耳にしたが、「見たくないと思って目をつぶっていた」という飯星。
その目を必死に開かせたのが父だった。
もともと統一教会に疑念を抱いていた飯干氏は娘が教会のスタッフと共にニューヨークに渡ったことを知ると「絶対に取り戻す」と宣言。
統一教会に“宣戦布告”した。

「教会側から『お父さんをなんとかしてほしい』と言われた飯星さんは、新約・旧約聖書を読んで理論武装した父との対話に臨んだそうです。
当初は頑なな姿勢を崩さなかった飯星さんですが、いままで見たことのない父親の『弱々しい姿』に心を動かされ、深入りする前に立ち止まることができたといいます」(ワイドショー関係者)

 

以来、統一教会とは縁を切り、当時のことを振り返る機会もほとんどなくなった。

 

「2012年にオセロの中島知子さん(50才)と占い師の深い関係が報じられたときに、マインドコントロールから逃れるように呼びかけていたのが印象的でした。
ワイドショーのコメンテーターを務めたこともありますが、いまは教会のことに触れたがらないといいます」(テレビ局関係者)

 

ドラマや舞台を中心に活躍するベテラン女優の音無美紀子(72才)も1986年に入信した元信者。
家族の病気や、夫で俳優の村井國夫(77才)の女性問題に悩み、2800万円の“多宝塔”を購入したと報じられたこともあった。

「村井さんの懸命な説得で1992年頃に脱会にこぎつけています。
もともと音無さんは霊感商法に懐疑的で、その点も“洗脳”を解く突破口になったようです。
いまも支え合う円満な夫婦関係を築いています」(前出・芸能関係者)

 

統一教会と決別した人、いまも共にある人。
それぞれが第二の人生を歩んでいるが、芸能人が宗教団体の“広告塔”になる危うさは当事者だけの問題ではない。
統一教会問題に詳しい紀藤正樹弁護士はこう指摘する。

「宗教団体にとって芸能人の信者が果たす役割は大きい。
広告塔として団体の知名度を上げるだけでなく、彼らがいることで“いい団体である”という誤ったイメージを植え付ける可能性もあります。
有名人は内部で特別扱いされるため、その団体が生み出す悲劇に気づきにくい。
桜田さんは沈黙を続けていますが、大勢の被害者がいる現実に目を向け、できれば問題解決に協力してほしい」

 

いまも頑なに無言を貫く桜田。
彼女の耳に今回の事件や、霊感商法による被害者の声は届いているのだろうか。