5月27日、東京・お台場の高級ホテルのフロントはひっそりと静まりかえっていた。
一組の男女が姿を現わしたのは19時45分のことだった。
紺色のスーツ姿の男と、その後ろにはミニスカートにニーハイソックスというファッションに身を包んだアイドル風の女性が距離を置いて歩く。
2人はエレベーターで高層階まで上がると、「1236号室」に姿を消した──。
スーツ姿の男は、吉川赳・衆議院議員(40)。
岸田派に所属し、トップの岸田文雄首相から「我が派のムードメーカー」と評される自民党の若手議員だ。政治部記者が語る。
「岸田総理が誕生した総裁選で奔走した功労者の一人が吉川氏です。
岸田首相からの信任も厚く、会食にもたびたび同席しています。
昨年、岸田首相が就任後に岸田派の事務総長を務めた故望月義夫・元環境相の墓参りをした際にも、吉川氏は同行しています」
吉川氏の名が注目されたのは昨年10月の衆院選だった。
地元の静岡5区は、当時無所属ながら二階派であった細野豪志氏と岸田派の吉川氏が争う異例の「保守分裂選挙」が繰り広げられた。
「選挙に弱い吉川氏は2012年の衆院選で細野氏に敗れるも比例復活して初当選。
2014年には落選、2017年も落選したが、女性との問題で自民党を離党した議員の辞職に伴い、繰り上げ当選(2019年)。
そして昨年の総選挙では首相側近の木原誠二官房副長官が駆けつけ『私も岸田文雄も全力で応援する』と語り、岸田首相との近さをアピールしたが、結果は細野氏に4連敗。
辛うじて比例復活したばかりです」(同前)
選挙には連敗したものの岸田派の若手議員として自民党青年局学生部長を務めるなど評価を受けてきた吉川氏。
一方で、その素行には不安の声も上がっていた。
吉川氏をよく知る自民党関係者はこう語る。
「彼の遊び方はハンパない。
酒が強く六本木や西麻布で飲み歩いています。
自民党では若手議員になりますが“オヤジキャラ”で、女性が大好き。
口にする下ネタも下品で、女性にセクハラと捉えられかねない発言も多い」
港区の飲食店店員が声を潜めてこう続ける。
「吉川氏は港区女子のあいだでは“お金持ちのおじさん”として、知る人ぞ知る有名人。
モデルや港区女子を相手に“パパ活”をしているという噂が絶えない人です」
ちなみに、吉川氏には妻と2人の娘がいる。
取材を続けていた本誌『週刊ポスト』取材班が吉川氏の決定的シーンを目撃したのは、衆院予算委員会が開かれていた最中だった。
5月27日は国会で「調査研究広報滞在費(旧・文書通信交通滞在費・以下『文通費』)」の改革について質疑が行なわれ、岸田首相が「いつまでと区切って議論することではない」と答弁。
改革を先延ばしにしたとしてメディアでも話題になった。
その国会散会後の夕刻、吉川氏の姿は汐留の高層ビルにあった。
議員バッジをつけた吉川氏は、きっちりとセットされたツーブロックのヘアスタイルで、何かに急かされるように速足で歩いていた。
手には白い紙袋を携えて、向かった先は夜景が綺麗なことで有名な高級焼き肉店だ。
18時になる数分前に店に入った吉川氏はイライラした様子でレジのカウンターを何度も叩いて店員を呼ぼうとする。
ようやく店員が応対に出ると、「吉川です」と名乗りながら、案内を待たずに店の奥へと進んでいった。
1秒でも惜しむかのように入っていった個室には、すでに女性が1人で待っていたようだ。
しばらくすると、個室の格子扉から吉川氏の声が漏れてきた。
「お酒は飲める? 甘いのがいい? ディタオレンジをください。私は瓶ビール!」
吉川氏は2人分の酒を注文すると、女性と楽しそうに会話を始めた。
「学生だよね? 俺、18歳に興味あるわ」
「じゃーさー、遊びのカノジョやってみる?」
「乾杯」の言葉が聞こえてから間もなく、吉川氏は甲高い声でパパ活を提案するような言葉を投げかけた。
女性の声は籠り気味でよく聞き取れない。
記者が格子越しに中の様子を窺うと、「18歳」という女性のグラスは空になっていた。
この4月から成年年齢は20歳から18歳に引き下げられた。
言うまでもないが、「未成年者飲酒禁止法」によって禁止されていた20歳未満の飲酒は、新成人であってもこれまで通り禁じられている。
その後、個室からは吉川氏が上機嫌に語る「金」の話も──。
「俺、金持っていてもロクなことに使わないのよ。
議員の給料って、話題の交通費(文通費)とか入れて160万くらい。
信用できる子と遊びたくてさ」
19時20分、食事を切り上げた2人は店を出た。
吉川氏の後ろを歩く女性は、白い紙袋を大事そうに抱えている。
長い黒髪を三つ編みにして厚底シューズを履いた華奢な女性は、確かに10代に見える。
2人はタクシーに乗り込むと、お台場の高級ホテルに向かった。
そして冒頭のシーン通り、吉川氏がチェックインカウンターに立ち寄ってから一緒にエレベーターに乗り、ホテルの一室に入ったのだ。
部屋で1時間半ほど滞在した後、2人は再びホテルのロビーに降りて、タクシーに乗り込んだ。
女性を千代田区内の駅で降ろして、この日のデートは終了となったようだ。
22時すぎ、タクシーの後部座席でふんぞり返り、顔を扇子で扇ぎながら吉川氏は赤坂議員宿舎に帰ってきた。
4時間弱の食事とホテル滞在で、いったい何が行なわれていたのか。
その後、『週刊ポスト』の取材で、相手の女性が有名私大1年生で18歳のXさんだということが確認できた。
事実関係を確認するため、記者は通学中のXさんを直撃した。
はじめは驚いた様子で、吉川氏のことも、デートした日のことも「知らないです」と否定していたXさんだったが、記者が当日の一部始終を見ていたことを告げた上で、Xさんが現在18歳であること、お酒を飲んだことについて確認すると、小さな声でこう答えた。
「はい……。吉川さんがお酒を勧めてきて、軽いお酒ならと飲んで……」
お台場の高級ホテルの部屋で過ごしたことについては、こう説明した。
「4万円のお小遣いをいただいて、バーに行くだけだからって……。
バーだったはずがホテルの部屋で飲むと言われて。
何も考えずについて行ってしまった私が悪いんです」
しばらく青ざめて俯くXさんに、ホテルの部屋で何をしていたのかを記者が重ねて問うと、苦しそうにこう口を開いた。
「ルームサービスでお酒を頼んだあと、すぐに吉川さんにベッドで服を脱がされて……。
私、経験がなかったから、怖くて過呼吸になってしまい。
経験がないからと何度も拒否をしたら、『胸を見せて』と言われて、吉川さんは私を見て自慰行為を始めて……。
私、断わるのが苦手で。
部屋に行った私が悪いんだとわかっています。
本当にごめんなさい」
そう語ると、Xさんは立ち去ってしまった。
Xさんの言葉が事実であれば、吉川氏は女子大生に小遣いを渡して飲食店やホテルで過ごす“パパ活”を行なっていたことになる。
さらに、Xさんが18歳だと知りながら彼女の分の酒を注文し、飲酒するという違法行為に加担していた問題もある。
現職の国会議員としての資質が問われる行動であり、ただの遊びと見過ごすわけにはいかない。
記者が電話で事実確認を求めると、
吉川氏は「(女性といたとされる時間帯は)部屋にいましたね、宿舎の。俺じゃなかったらどうするんですか?」と反論。
その後、折り返してきた電話で焼き肉店で一緒にいたと思われる女性とホテルには行っていないと否定した。
さらにその後も記者に電話をかけてきた吉川氏は、
「たまたまチェックインして、たまたま知らない女性とエレベーターに居合わせたってことでしょう。(焼き肉店にいた女性と)同じ女性のわけないじゃないですか」と語り、
女性とホテルにいたことについては、「食事はしました」「食事ではなくお酒をね、バーに行こうと思って」「バーは確かやってなかったんで、和食の所がありますよって言われてフラフラ歩いていたってことはありますよ」と説明が変遷。
ホテルに1時間半ほど滞在していたことについては「部屋には入っていない。20分くらいフラフラして帰った」と語った。
改めて書面で確認を求めると、こう回答した。
〈ご質問の女性は、飲食店で働いている方で、接客をされているときも店で飲酒をされていたことから、当然20歳以上だと思っておりました。
貴誌からのご質問を拝見して驚いています。
ご質問の飲食店で食事をしたのは事実です。
食事の後にもう少し飲もうということで隣接したホテル内の店舗を探したのは事実ですが、客室を取った事実もありませんし、まして客室に滞在した事実も一切ありません。
また、ご質問の女性に金銭を渡したこともありません。
貴誌は「滞在されたことを確認し」たと言いますが、事実がない以上確認できるはずもありません。
くれぐれも事実無根の記事を掲載することがないようあらかじめ申し添えます〉
記者は吉川氏がXさんに対して「18歳」という前提で会話しているのを確認しており、焼き肉店から「隣接したホテル」ではなく、タクシーで移動してお台場のホテルにいるところを撮影している。
さらにXさんの証言とも大きく食い違っている。
自民圧勝が予想される参院選を目前に、総裁派閥の吉川氏による自覚に欠ける行動は、岸田政権の驕りの表われなのか。
これまで彼を比例復活させてきた岸田首相は、またしても救いの手を差し伸べるつもりか。