日本テレビの桝太一アナウンサーが23日、キャスターを務める『真相報道バンキシャ!』に出演し、3月いっぱいで日本テレビを退社し、大学の研究員に転身することを発表しました。
2006年に入社してから16年、アナウンサーとして様々なジャンルの番組を担当させて頂いてきました。
大好きな生き物たちの魅力を伝える日もあれば、自然災害・コロナ禍のニュースを伝える日もありましたが、自分の中で共通して考え悩み続けてきたことは、「どうすれば、もっと適切に科学を伝えられて、より良い社会に貢献できるだろう?」という点でした。
伝え方ひとつで、もっと魅力的にできることもあれば、避けられたはずの誤解もあったと感じてきたからです。それを解決する手段の1つが、科学と社会をつなぐ「サイエンス・コミュニケーション」という学問分野です。
日本でもすでに多くの皆さんが研究・活躍をされていて、私もこれまで微力ながら携わってきたつもりでしたが、40歳を迎えたことを一つの節目として、今後の人生を使って本格的に取り組んでいこうと決意するに至りました。
40年のうち、科学好きとして学んできた前半と、伝え手として学んできた後半、その2つを組み合わせることで、今後もしかすると自分にしかできない形で社会に貢献できることがあるのではないか、と考えております。今回、まだ研究者としての実績もない私を受け入れてくださった、同志社大学ハリス理化学研究所には、感謝の気持ちとともに、これからの活動で応えていく所存です。
また、テレビの世界から程遠くアサリを研究していた変わり者を採用してくれたばかりか、分不相応と言える立場にまで抜てきし成長させてくださった日本テレビには、心の底から感謝しています。
「真相報道バンキシャ!」をはじめ、これからさまざまな場を通して研究の成果を還元していければと、決意を新たにしております。この16年間の大切な“ファースト・キャリア”で培った経験をいかし、お世話になった皆様、そして何より、温かく見守ってくださってきた視聴者の皆様に恩返しできるよう、新しい道へ進んでいこうと思います。引き続きどうか、よろしくお願い申し上げます。
桝アナウンサーをバンキシャ!での発表前に取材すると、これからの研究テーマや、背中を押してもらった言葉、今後の目標などを明かしました。
桝アナは4月から所属する同志社大学ハリス理化学研究所で専任研究所員(助教)として “科学を社会に適切に伝える方法”について研究します。
また、現在メインキャスターを務めている『真相報道バンキシャ!』の番組出演は継続し、研究と同時に“科学を適切に伝える”ことを番組でも実践していくということです。
――大学では具体的にどんな研究をされるんですか?
まずはテレビの世界から程遠くアサリを研究していた変わり者を採用してくれたばかりか、分不相応と言える立場にまで抜擢し成長させて下さった日本テレビには、心の底から感謝しています。
大学で実際にどこまでやれるかは4月以降の話になってきますが、大まかな研究テーマとしては、
・科学を伝える手段の1つとして、テレビはどの程度の影響力があり、どんな役割を担うべきか?
・科学を伝える手法・媒体にはどんな選択肢があるか? それぞれの特性をどう活かしていくべきか?
・科学と社会の架け橋になる人材をどのように育成し、社会に広げていけるか?
…などを考えています。
“科学”といっても範囲は広いですが、自分が得意とする生き物や自然現象のような“楽しい科学”から、コロナ禍での正しい知識や数字の解釈といった”必要な科学”まで扱っていくことを目指しています。
――研究者の道を選ぼうと思ったきっかけは?
「社会と科学を繋ぐ架け橋が必要」という考え自体は、高校生の頃から持っていました。
その後、テレビ局員として現場経験を重ねていくうちに、具体的にどんな役割・ポジションが今の日本にはまだ欠けているか、徐々に見えてきたと思っています。
そこを自分が担うためには、本格的にアカデミアの人間として過ごす必要があると決意しました。
――決断にあたり、家族の反応は?
妻には早い段階から相談をしていました。
フリーアナウンサーになることは昔から絶対に反対されていましたが(笑) 今回は転職であり、また社会に貢献しようとする意図が明確だから、それなら止めないと言ってくれました。
生活面でも、うちは妻もフルタイムの共働きなので「もし転職がうまくいかなくても何とかする」と言ってもらえたのは大きかったです。
共働きならではの苦労もこれまでありましたが、今回の決断にはプラスになってくれました。
2006年に日本テレビに入社した桝アナウンサー。
スポーツの実況などで経験を積み、2011年4月には朝の情報番組『ZIP!』の総合司会に抜擢されました。
さらに『全国高等学校クイズ選手権』の4代目司会や、『24時間テレビ 愛は地球を救う』の総合司会など、日本テレビの歴史ある番組を数多く担当。
2016年には好きな男性アナウンサーランキングで5年連続1位を獲得し、殿堂入りを果たしました。
――16年のキャリアを重ねてきた“アナウンサー”という肩書がなくなり、研究者として0から再スタートを切ることに、怖さや不安は感じますか?
もちろん会社員を続けながら取り組む選択肢もあったとは思うのですが、自分に甘い私の性格上、どうしてもお客さん気分が抜けずに人生が終わってしまうように思えて、本気で取り組むなら、まず自分の退路を断っておいた方が良いと思いました。
0からの再スタートになる部分も多いので、それはもう怖さや不安だらけです。
ただ、20代でZIP!を始めたときも同じくらい怖くて不安でした。
そういう時こそ人は大きく成長するものだと思っているので、必要な不安なんだろうと自分に言い聞かせています…。
――これまでで1番印象に残っている仕事は何ですか?
2018年の「ZIP!」ガラパゴス諸島からの生中継です。
子どもの頃から憧れていた場所に行けたことはもちろん、アナウンサー生活16年の中で、このとき以上に「自分の言葉」で話せたことはありません。
アナウンサーの定義は色々ですが、「伝える」という点でいうと、本当の意味で「アナウンサー」になれた瞬間だったと思っています。
2021年4月には、それまで18年司会を務めてきた福澤朗さんからのバトンを受け継ぎ、『真相報道バンキシャ!』のメインキャスターに。
学生時代から勉強してきた生物の知識を生かした企画や、SDGsに取り組む現場を取材してきました。
これからは研究者とキャスターの“2つの顔”を持って、活動していきます。
――研究した内容を、どうやって『バンキシャ!』の放送に生かしていきますか?
今すぐ何かを変えることはできないかも知れませんが、これから日本中・世界中の科学の伝え方を学んでいくつもりですので、特に理系分野のニュースをお伝えする際、自分独自の手法と解説で、バンキシャ!にしか出来ないと言ってもらえるような信頼感を出していければと思っています。
また、自分自身で仕入れてきたテーマの取材にも積極的に出ていきたいと思っています。
――2つの顔を持つことのメリットは?また逆に不安に思うことはありますか?
テレビ局の外に基準を置くことで、より客観的な考え方・伝え方ができるキャスターになれるのではないかと思っています。
また、私の研究テーマは実践あってこそのものですので、研究と実践を1人で同時にできる立場は、どちらにとってもメリットになると考えています。
しゃべりの技術や日本語力などアナウンス面での不安は出てくるかも知れませんが、そこは(同じく『バンキシャ!』に出演している)後呂アナ・川畑アナがしっかりフォローしてくれると信じています。
――桝さんの最終目標は?
「桝太一が言うことならば…」と興味をもったり見たりしてもらえるような、信頼感ある伝え手。
僭越ながら名前をお借りするならば、「理系版の池上彰さん」のような存在を目指します。
お世話になった皆様、そして何より、温かく見守って下さってきた視聴者の皆様に恩返しできるよう、新しい道へ進んでいきます。
「真相報道バンキシャ!」をはじめ、これから様々な場を通して研究の成果を還元していければと、決意を新たにしております。