YouTubeで俳優の綾野剛(41)らを脅迫したなどとして、暴力行為等処罰法違反(常習的脅迫)や強要、証人威迫など5つの罪に問われた元参院議員のガーシーこと東谷義和被告(51)の初公判が19日、東京地裁(佐伯恒治裁判長)で開かれた。
ガーシー被告は起訴内容を大筋認め、「一生かけて罪を償う」と謝罪したが、弁護側は脅迫の常習性について争う姿勢を示した。
検察側は「CMを打ち切られたり、冷たい目で見られたりして、精神が崩壊する寸前でした」との綾野の供述調書を読み上げた。
ガーシー被告は白いワイシャツに黒のスラックス、青緑のビニールサンダル姿で入廷した。
やや頬が痩せ、短かった金髪は伸びて黒髪が交じっていた。Tシャツ、短パン姿でふてぶてしい笑顔を見せた6月の逮捕時とは対照的な気弱そうな面持ちで被告人席に向かった。
裁判長から名前を聞かれた際には「東谷義和です」と本名を答えた。
立ったまま手元の紙に視線を落とし「起訴状に書いてある発言をしたことに間違いありません」と述べ「逮捕から3か月、罪の償い方を考えてきました。一生かけて反省し、謝罪を続け、罪を償っていくつもりです」と謝罪した。
傍聴席を振り返り「本当に申し訳ございませんでした」と頭を下げた。
この日の法廷では検察側が朗読した供述調書によって、綾野の声が初めて公となった。
綾野は「根拠のない情報で傷つけるのは許せない。東谷という存在自体が恐怖だった。CMを打ち切られたり、冷たい目で見られたり、つらい思いをし、精神が崩壊する寸前でした」と心境を吐露。
今でも誹謗(ひぼう)中傷に悩まされるとし「人を信頼する気持ちをズタズタにされた。服役しても武勇伝として語るなら意味がない。(被告を)絶対に許すことはできない。厳しい処罰を望みます」と訴えた。
ガーシー被告は膝に手を置き、伏し目がちに耳を傾けていた。
また綾野の所属事務所会長の供述内容によると、綾野の5000万円の広告契約料のうち1500万円を返金することになり、CM契約期間も5か月から3か月に短縮された。
さらに、ファンクラブ会員が2000人退会するなどの損害も被ったとし「(ガーシー被告は)思考回路がどうかしている」と非難した。
検察側は冒頭陳述で、被告が詐欺トラブルに関わったとの記事が週刊誌に掲載され、知人らが手のひらを返すような態度を取ったとして報復を思い立ったと指摘。
自身の意に沿わない芸能人らを誹謗中傷する動画を配信し、サイト運営事業者から多額の収入を得たとした。
また今年1月、動画編集の関係者が家宅捜索され、告訴されたと知り「確実に俺に対してけんか売ってきてる」と会員制のオンラインサロンなどで発信したと指摘した。
起訴状によると、ガーシー被告は昨年2~9月にかけてYouTubeで綾野ら4人を脅迫。
今年2月、綾野ら2人の告訴状を取り下げさせようと考え、脅したとしている。
弁護側は「脅迫の常習性は認められない」と主張し、争う姿勢を示している。
公判は約1時間半で終了した。
次回公判は10月30日で弁護側が立証を行う。