コロナ禍も落ち着き、外食産業にも客が戻りつつある。
そんななかネット上で牛角について
「冷めたゴハンが出てくる」
「水を頼んだらカルキ抜きしてない水道水が出された」
「『牛角』なのに食べ放題が豚肉ばかり」
といった声が続き、話題になっている。

 

日本フードサービス協会が発表した「外食産業市場動向調査7月度」によると、以下のような記述があり、夏休みに入り業態全体の活況が見て取れる。

 

「ファミリーレストラン業態の全体売上は、前年比117.5%、2019年比は104.2%となった。
7月は気温の上昇に伴い、冷たいメニューが好調。
「洋風」は、半額クーポンなどで客数が伸び、売上118.7%。
「和風」は、土用の丑のうなぎ需要もあり、売上118.4%。
「中華」は、夏季フェアの中で特に辛いメニューが好調で、 売上112.7%。
「焼き肉」は、駅近繁華街の小規模店でも集客が回復し、売上116.5%となった」

 

一方で、「日経MJ」がまとめた主要外食33社の7月の既存店売上高は、全社で前年同月を上回ったとあるが、焼肉業態より抜粋すると、以下のようになっている。

 

店舗名 (全店売上高、既存店売上高、客数、客単価)
レインズインターナショナル  (7.5%、10.4%、3.2%、6.9%)
物語コーポレーション  (16.7%、9.8%、4.8%、4.8%)

 

業態全体の伸率が高い中、「焼肉きんぐ」を運営する物語コーポレーションと比較すると、「牛角」を運営するレインズインターナショナルは、決して伸ばしているとはいいがたい。
客単価が上がっているのは、メニュー構成や原価アップに伴う価格改定が功を奏しているにすぎない。
6月も同様であるが客数が伸びていないのは、牛角を選んで足を運ぶ客が他社に比べて増えていないことを表している。

 

そこで実際に店舗に足を運んだうえで、“客がリピートしない理由”を探してみたら結構あった。

 

(1)店舗に足を運ぶ前
同店の予約システム(ホットペッパーグルメ)に起因する「惜しい」により、すでに意欲を失わせる出来事があった。
「ご予約内容に変更があります」と記載されたメールが予約当日に届き、予約時には「個室」と記載されていたが「テーブル席」に変更されたとのこと。
今回は職場の後輩を伴っての来店ゆえ変更は了承できるが、ビジネス利用など用向きによっては、余計な変更と移るのではないだろうか。
ちなみに、予約当日のキャンセルにはチャージがかかる旨が、予約時のメールには記載されていた。

 

(2)店舗に足を運んでから
事前に食べ放題をリクエストして訪問したのだが、担当したスタッフより注文を聞かれた。
確認ではなく「どのコースにしますか?」である。
牛角は選ぶコースによりメニューが異なるため、注文が確定しているなら注文したメニューしか机上にはないはずである。
改めて「90品食べ放題コース」を注文したのだが、通常メニューが下げられておらず、タブレットからの注文時に「該当番号がない」事態となった。
当然、見ていたメニューが異なるのだから、該当なしも仕方ないことではあるが。

 

(3)注文した商品が届いてから
他社の食べ放題と同様に、小皿サイズにて提供された。
ここまでは良しとしよう。
客の思い込みと店舗のサービスが異なっていることに起因する「惜しい」が、ドリンク類だ。
生ビールはグラスが常温、サワー類もグラスも飲み物も冷たく感じなかった。

昨年、同チェーン他店舗を訪問した時に「70品食べ放題」を注文し、「牛」がほとんどなかったことを念頭に「90品食べ放題」を注文したのだが、やはり「牛」らしい選択肢は多くなかった。
牛豚鶏と表示せず、部位別の表記をメインにしていることで牛の少なさをカバーできていると読んでいるのだろう。

また、来店したときに、「今日はキムチはありません」とスタッフより告げられた。
メイン商品のひとつが売り切れであるなら、店舗前に掲示してほしいと感じたのは私だけではないだろう。

 

(4)価格妥当性について
90品食べ放題コースは「一人3938円」、アルコール飲み放題は「一人1628円」。
店内で提供された商品とホスピタリティを評価すると、残念ながら価格妥当性は感じられなかった。

 

同店に隣接するビルに「焼肉ライク」の看板を見つけた。
次はこっちでよいかな、というのが素直な感想だ。

 

まだまだ暑さが続く中、仕事終わりに「焼肉と冷たいビール」を楽しみたい客は多いことだろう。
日本フードサービス協会のデータを見るまでもなく、外食に客は回帰している。
街には多くの客が店舗を求めてさすらう姿が多く見られる。
外食の中でも「焼肉」ほど、家で食べるよりは外で食べる業態はないだろう。
客単価に支えられているから売上高は見かけ上伸びているが、実際客数の伸びはそれほどではない。

 

客に選ばれる価値やホスピタリティを創造できていないチェーンは、今後の展開は苦しくなっていくことだろう。