オホーツク海に観光船「KAZUⅠ(以下、カズワン)」が沈没し、26人の乗客・乗員が冷たい海に投げ出されてから2週間あまり。
いまだに多くの人が行方不明のままだ。

 

船長の豊田徳幸氏(54)とともに、運営会社「知床遊覧船」の桂田精一社長(58)は業務上過失致死の容疑で捜査対象になっているが、行動は制限されていない。
事故を起こした船の責任者ながら、自由の身なのである。「カズワン」の母港・ウトロ港近くの住民が話す。

「遺族の方々への説明会や弁護士との打ち合わせで忙しそうではありますが、桂田社長が憔悴しているようには見えません。
事故の重大さを理解しているのか、はなはだ疑問です」

 

今回の惨事は、決して偶発的に起きたワケではない。
背景には、国土交通省や海上保安庁の調査により判明した桂田社長によるズサン過ぎる経営実態がある。
以下は、明らかになった呆れた事実の数々だ。

・「カズワン」は昨年6月に座礁事故を起こし、豊田船長は業務上過失往来危険容疑で書類送検されていた。

・「カズワン」の船首には、たびかさなる事故で数十cmのヒビが入っていた。

・船と通信するために立てられた事務所のアンテナが破損。無線が使用不可能だった。

・そのため携帯電話で船と連絡をとっていたが、豊田船長の所有する「au」は大半の航路で電波が届かない状態だった。

「桂田社長は観光船の他にも、知床の旅館数軒の運営にも携わっています。
ただ最近は新型コロナウイルスの影響などで、経営状態はかなり悪かったとか。
事務所のアンテナが壊れていたのに修理しなかったのは、費用をケチったからではないでしょうか。

桂田社長は、海が多少シケていても利益優先で『船を出せ!』と指示していたそうです。
事故当日も午後から天候が悪くなる予報が出ていたにもかかわらず、『カズワン』は出航しました。
4月27日の謝罪会見で桂田社長は『自然現象なので天気図が常に当たるワケではない』と話していますが、故意だった可能性があります」(全国紙社会部記者)

 

事故直後、桂田社長は事務所に不在だった。
出産を終えた夫人が、退院日だったので迎えに行っていたのだという。
事務所に姿を現したのは、「カズワン」が音信不通になって1時間以上たった午後3時過ぎだったという。

「特に事故対応に当たったワケではないそうです。
桂田社長は経営者ではあっても『船の素人』ですから、何をして良いのかわからなかったのでしょう」(同前)

 

犠牲となった26人のうち、12人は行方不明のままだ(5月11日現在)。
桂田社長は、5月7日に乗客の家族に対し説明会を開催。
乗客1人あたり、上限1億円の賠償をすると語ったとされる。
だが桂田社長の表情に、悲壮感はうかがえないという。
『週刊新潮』(5月19日号)によると、賠償金はすべて保険会社の負担になるというのだ。

「同誌によると、これまで『知床遊覧船』は最低限必要な上限3000万円の保険にしか入っていなかったそうです。
それが今年4月、たまたま保険額を上限1億円に引き上げた。
1億円は事故の賠償金額としては妥当です。
つまり、桂田社長の懐はまったく痛みません。
海上保安庁の捜査費用も、税金でまかなわれることが決まった。
桂田社長は、今頃ホッとしているでしょう」(同前)

 

説明会で「申し訳ございません」と謝罪の言葉をくり返す桂田社長。
口先だけでなく、ぜひ行動で親族を失った方々への誠意を示してほしい。