日本列島は連日、殺人的な暑さが続いている。

 

7月31日までに環境省が各地で発表した熱中症警戒アラートは計431回。
昨年はこの時期までに計339回だったことが、今夏の酷暑を物語っている。

 

8月6日からは夏の甲子園が始まる。
毎年この時期になると、球児の熱中症問題について盛んに取り上げられるが、選手と同様に過酷な環境に身を晒すのが、アルプススタンドを賑わす応援団、特に吹奏楽部の生徒たちではないか。

 

彼らは自校の攻撃回の度に起立し、会場を包み込むような大音量で演奏する。
例えばカラオケで熱唱するとカロリーを消費するように、楽器演奏も体力を使う。
直射日光に晒されながらそれを何度も繰り返すのだ。酷暑対策は野球部関係者のみならず、各校の吹奏楽部も頭をひねっている。
今夏、地方大会を制し、甲子園出場を決めた代表校の吹奏楽部の顧問たちに話を聞いた。

 

北海高(札幌市=2年連続40回目)の鈴木顧問は「北海道とは暑さのレベルが違う。暑さで靴の裏が地面に張り付き、ベロンと剥がれた時は衝撃を受けました」とこう話す。

 

「応援団は自校が出場する前の試合の途中から、アルプススタンドの指定された場所で待機します。
これが直射日光だと本当にキツイ。
以前は1時間半ほど炎天下の中で待機したこともあった。
今は延長戦のタイブレークが採用されて幾分はマシになりましたけど。
今夏は例年以上の暑さです。
待機場所を日陰にしてもらうように頼もうと思っています。
部員の服装も、これまで下半身は制服でしたが、今回からはジャージに変え、上半身は白地でメッシュの風通しのいいシャツを着ることになりました。
とにかく暑い。
主役は球児たちなので、あまり意見をするつもりはないのですが……。
応援席がどれだけ暑いか、鉄板を持って行き、太陽光で目玉焼きが作れるか実験しようと思っています(笑)。
もちろん、焼け上がらなくても卵は無駄にせず、食べますよ」

 

九州国際大付高(北九州市=2年連続9回目)の西村顧問も暑さを警戒している。

 

「福岡県大会の決勝戦では部員2名が熱中症になりました。
夏の甲子園の応援は前任校を合わせて6回経験しています。
生徒が体調不良を起こすことはしょっちゅうでした。
なので、水分補給は徹底させます。
最低でも500ミリリットルのペットボトル4本、そのうちの1本か2本は凍らせて持ってこさせる。
試合中は回が変わるごとに給水を呼び掛けて……。
私は五回、七回のタイミングでクーラーの効いた喫煙所に行って涼むことができていましたが、生徒はもっとしんどいはず。
例えば、1人の打者が何球も粘っていると、吹奏楽部はずっと楽器を吹きっぱなしですから。
大事にならないよう、生徒たちの意識を高めていきたい」

 

甲子園球場のある兵庫県の社高(加東市=2年連続2回目)の奥村顧問は「初出場だった昨年は暑くて死にそうになりました(笑)」とこう続ける。

 

「甲子園常連校ならともかく、ウチは初出場で勝手がまったくわからなくて。
暑さもですが、楽器のダメージも凄まじい。
直射日光を受けると、木管楽器は割れてしまうんです。
ウチは県立高で甲子園常連校じゃないから、外で使える楽器を持っていない。
外での楽器の取り扱いにも注意したいです。
昨夏は楽器をひっくり返して壊してしまったので」

 

 

愛工大名電高(名古屋市=3年連続15回目)の遠山顧問は同校出身。
高校時代にもアルプススタンドでの応援経験がある。

 

「ウチは暑さに強いんです。
体調不良になる部員はほとんどいません。
部員数は206人。
甲子園の応援は、その中でもマーチングを担当する部員がメインになります。
マーチングは重い楽器を持ちながら、パフォーマンスをする。
屋外での演奏に慣れているし、暑さへの耐性もついているのだと思います。
それに、部内には保険係という部門がある。
その子たちが率先してサプリメントを配ったり、給水を呼び掛けてくれる。
心強い存在です」

 

応援団の存在はアルプススタンドに華を持たせ、そのパフォーマンスは甲子園に欠かせないものとなっている。
表舞台に出ることは少ない彼らの夏にも注目だ。

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