「高級『生』食パン」を全国チェーン展開する「乃が美」が、店舗を運営するFC(フランチャイズ・チェーン)店6社に対し契約解除を通告し、FCチェーン店側がそれに対して大阪地方裁判所に解除の取り下げを求める仮処分を申し立てるなどトラブルになっていることが取材でわかった。

 

乃が美の創業は2013年。大阪プロレス会長の阪上雄司前社長がパン屋を開業し、そこにアパレルや広告業を手掛けてきた森野博之現会長が出資する形で法人化した。

 

乃が美の店舗の大半は「はなれ」と呼ばれるFC店。
約200ある店舗のうち、直営店はわずか14。
それ以外は全てFC店なのである。

 

昨年12月1日にには、乃が美のFC店ほぼ全店が赤字に陥っており、FCオーナーたちが「このままでは自己破産するしかない」という状況まで追い詰められていることが報じられた。

 

あれから約4ヶ月。再びFCオーナーたちから「もう限界です」という“悲鳴”が寄せられた。
そこで再び取材を進めたところ、裁判所を巻き込んだ“泥沼内紛”に発展していたのだった。

 

FCオーナーが語る。

 

「高級食パンブームが去った上に、コロナ禍で売上が落ち込んでいる。
にもかかわらず、本部はFC店が支払う〈売上の10%〉というロイヤリティを下げてくれない」

 

乃が美は2018年に「全国で1日に5万本売れるパン」として話題になり、大ブレイク。
2019年には東京の投資ファンド「クレアシオン・キャピタル」におよそ半数の株式を譲渡し、上場を目指すことになったが、この頃から高級食パンブームに翳りが見え始める。
そして2020年からのコロナ禍で業績は一気に下降していった。

 

2022年3月には創業者の阪上氏が森野氏と対立し、“追い出される形”で社長を辞任。
森野氏が会長として率いることになったが、本部とFC店の間の店舗経営を巡る“溝”が広がっていった。
その原因のひとつが、10%のロイヤリティの存在だった。

 

「これまでずっと交渉を続けてきましたが、もう限界です。
森野さんからは『ロイヤリティを下げるから』と都合のいいことを何度も言われてきました。
結局、ロイヤリティを下げるつもりなどないのでしょう。
このままでは我々は潰れてしまう」(同前)

 

議論は平行線を辿った。
そして、昨年12月26日、大阪・心斎橋にある乃が美本部の会議室でオーナー会議が開催された。

 

別のFCオーナーが明かす。

 

「この日、森野さんが我々の前で、『今後、ロイヤリティを軽減することはない』と表明しました。
FC店はほぼ全てが赤字です。自己破産寸前の人も多い」

 

2023年1月13日、追い詰められた現在FC店を運営している21名のオーナーのうち18名が連名で、代理人弁護士を通じて、乃が美本部に「要望書」を内容証明で送付した。
求めたのはロイヤリティの引き下げである。

 

すると、これを受けた乃が美の本部は“強硬手段”をとった。

 

「ロイヤリティ支払いが遅滞しているオーナー会社6社に『契約解除』を通告してきたのです。
契約を解除された会社は、発注システムの停止とともに、パン作りに必要な粉の供給も止められました」(同前)

 

一方的に契約を解除されたFCオーナーたちは、2月20日、乃が美が契約解除を取り下げる仮処分を大阪地裁に申し立てたのだった。

 

乃が美に事実関係を尋ねる質問状を送ったところ、法務部が回答した。

 

——昨年12月26日のオーナー会議で森野氏が「ロイヤリティを軽減することはない」と表明した理由は?

「ロイヤリティを引き下げないと表明した事実はありません。また、弊社が提示した条件を承諾したFCオーナー様のロイヤリティについては、現に引き下げを行っており、弊社が約束に違反した事実はありません」

 

——今回、6社のオーナーが契約を解除された。その理由は?

「弊社がフランチャイズ契約を解除した理由は、フランチャイズ契約の解除事由に該当したことに基づいています」

 

その上で、FCオーナーとの関係について、こう述べるのだった。

「弊社としては、FCオーナー様との信頼関係を前提として、本部とFCオーナー様が共に繁栄できる関係を維持・発展させたいと考えています」