日本テレビ系「金曜ロードショー」の、4週連続「クリスマスに見たい映画」特集のオーラスを飾るのは、王道のクリスマス映画『ホーム・アローン2』を放送。

 

地上波放送では12回目となり、クリスマスシーズンの放送は6回目の定番作品だ。

 

去年のクリスマスは自宅に置いてけぼりにされ、ホーム・アローン(自宅にひとりぼっち)にされたケビン(マコーレー・カルキン)は今年のクリスマス、フロリダ旅行に行く家族と空港ではぐれてしまい、まったく別方向のニューヨーク行きの飛行機に乗ってしまう。

 

またまたひとりぼっちになったケビンはなんとかして、家族のいるフロリダに行こうとする……ことはなく、クリスマスツリーもないフロリダなんか行きたくないし、意地悪なお兄ちゃんと離れられてせいせいする、ひとりでニューヨークを楽しんじゃおう! と街へ繰り出すのだった。

 

現代なら携帯電話でいくらでも連絡が取れるだろうが、映画公開の1992年はまだまだ普及率が低いころ(ちなみにアメリカではこの年にIBMがタッチパネル付き携帯、今でいうところのスマートフォンをショーに出展していた)。
最初この映画の設定を聞いたとき、どうやってニューヨークにいることを知らせて、家に帰るんだろうと不思議だった。
フロリダ-ニューヨークの距離は約1700キロ。東京から沖ノ島ぐらい離れているんだから。

 

ケビンは空港で父親の鞄を預けられていて、その中には財布も入っていた。
ケビンは「プラザ・ホテルでリッチなクリスマスを」過ごそうとホテルに向かう。
ハンディタイプのカセットレコーダーで声をスロー再生して、父親のフリをして電話でホテルを予約。
でもロビーで部屋のキーを受け取る時はどうする?

 

子供がやってきたのを訝しがるスタッフに

「僕はカウンターに隠れちゃうチビッコだよ? そんな子供がホテルの予約なんかできると思う? パパが予約したんだ。パパは会議中で、僕が退屈だってゴネたら『いたずらしないで部屋でおとなしくしてろ』ってさ。僕、いたずらっ子なんだ!」

なんという小生意気……おっと、大人びた子供なんでしょう。
この行為がすでにいたずらだよ!

 

こうして高級ホテルのスイートルームで、ひとりぼっちのクリスマスを満喫するケビン。
父親のクレジットカードでルームサービスを頼み、昼間はハイヤーでチーズ・ピザを頬張り、おもちゃ屋でショッピングという贅沢三昧。クリぼっちは最高だぜ!

 

ところが、ケビンは街中で前作に登場した泥棒コンビ、ハリー(ジョー・ぺシ)とマーヴ(ダニエル・スターン)に出くわしてしまう。
彼らは刑務所を脱獄してニューヨークに来ていたのだ。
何たる偶然! 二人から逃げ出したものの、父親のクレジットカードが盗難届に出されており、ケビンは詐欺犯扱いされホテルにいられなくなってしまう。

 

公園で暮らしているホームレスの鳩おばさんに助けられたケビンは男に捨てられたことでひとりぼっちの生活を続けているおばさんの身の上話を聞き、「本当にひとりぼっちになるのは辛いだけ」ということに気づく。
そしてクリスマスの売り上げはすべて子供病院に寄付しようというおもちゃ屋で強盗を目論む泥棒コンビをやっつけるべく、罠を仕掛ける。
ケビンと泥棒コンビの対決が始まるころ、ママはケビンの行方を求めて街をさまよっていた。

 

前作は家にひとりぼっちで取り残された子供が、侵入してきた泥棒を仕掛けた罠で撃退するというやり取りが笑いを誘い、作品のフォーマットが一作目で出来上がっているので続編も同じ展開が繰り返される。
ただし前回は家の中で、今回は外。
ケビンは改修中で無人になっている叔父のアパートに念入りな罠を仕掛けた上でおもちゃ屋で強盗中の泥棒コンビの写真を撮って、ショーウインドウを叩き割り、警報放置を作動させる。

 

怒り心頭の二人をうまくアパートに誘い込んで仕掛けた罠に嵌めていく。
泥棒コンビはブロックを投げつけられたり、ハシゴから落ちたり、ネイルガンで釘を撃ち込まれたり、頭髪を燃やされたり、前作でやられたペンキ缶の罠を避けたところに鉄パイプをぶつけられたり……ってやられ放題。
その度に派手なリアクションをとる泥棒コンビが観客の笑いの渦に巻き込む。

 

一作目では泥棒コンビのダブルを演じたスタントマンが、必要以上に派手にすっころんで階段から落ちたり、滑って転んで地面に頭をぶつける。
下手すれば大けがしたり、命に係わるようなオーバーアクションである。子供向けのコメディ映画なのに頑張りすぎじゃない?

 

しかしこの過剰なリアクション演技は、当時のスタント業界に衝撃を与えた。
スタントマンは「『ホーム・アローン』のスタントをやった」といえばどこの現場でも持て囃されたという。

 

これがもし「イテッ」とかいうだけで動きの少ないアクションだったら、この映画はバカ受けしただろうか。
子供向けのヒーロー番組だって悪役が派手にやられてくれるから、見ている視聴者は拍手喝采を主役に送るのだ。

 

「主役の活躍以上に悪役のやられ方が重要」というヒーローものの本質を『ホーム・アローン』は捉えている。
この『2』でも前作以上に、泥棒コンビが情けなく惨めにやられ派手に吹っ飛ぶので、観客は腹を抱えて大笑い。
トイレに頭を突っ込んで爆発(どういうシーンなのかは、ぜひ放送を見て欲しい)するところなんて涙が出るほど笑ってしまった。

 

そんな爆笑映画『ホーム・アローン2』にはある問題場面がある。
それは序盤、ケビンがプラザ・ホテルに泊まる場面で通りすがりの男に「ロビーはどこ?」と聞くと男は「そこを曲がって左だ」という。

 

この男はドナルド・トランプ。
後のアメリカ大統領。
撮影当時、トランプはプラザ・ホテルのオーナーで、映画のスタッフはホテルでの撮影許可を得ようとした際、トランプに「その代わりに映画に出してくれ」とバーターを持ち掛けられ、実現となった。

 

時間にしてたった7秒の、なんてことのない場面だが、後にこのシーンは問題になった。
トランプ元大統領が数々の問題発言で批判されるようになると、このシーンも問題視され、映画から出演シーンを削除しろと抗議が起きている。
思い切ってジョー・バイデン大統領に差し替えろという意見も。
そんな無茶な。

 

2019年にはカナダでテレビ放送された際、出演シーンがカットされてしまい、元大統領の息子や支持者がSNSで抗議する事態に。
放送枠の尺の都合上、カットされただけなんだけど。
ほんの数秒だし、カットしてもしなくても映画の内容には影響がない。
ちなみに主演のカルキンも「トランプ削除」には同意の意見を示している。

 

トランプ元大統領といえば、コストカット政策で知られてたけど、自分の出演シーンもカットしてはいかが?