9月10日、テレビ朝日系オシドラサタデー『トモダチゲームR4』が最終回を迎えたが、原作とまるで違うオリジナル展開に賛否の声が上がっている。

 

同作は、山口ミコト原作・佐藤友生作画の人気マンガ『トモダチゲーム』(講談社)の実写ドラマ化作品。
亡き母の教えに従って金より友情を大切にしている男子高校生・片切友一が、仲の良いクラスメイト4人と共に拉致され、「トモダチゲーム」なる謎のゲームに強制的に参加させられるというストーリーで、2017年には吉沢亮主演でドラマ化・映画化されており、今回は再実写化となる。

 

ジェイ・ストームが出資する「オシドラサタデー」枠ということで、この令和4年版となる『トモダチゲームR4』は、ジャニーズJr.の人気ユニット「美 少年」の6人と、同じくジャニーズJr.の「HiHi Jets」から2人が出演。
主人公の片切友一を美 少年の浮所飛貴が演じ、片切ら「Cグループ」の5人は他に、美 少年の佐藤龍我、HiHi Jetsの井上瑞稀、そして久保田紗友と横田真悠が演じている。

 

原作は累計発行部数440万部を突破した人気作品で、2017年版ドラマ/映画は吉沢亮、山田裕貴らの演技も好評ということもあり、この“ジャニーズ版”には当初から不安の声も上がっていたが、やはり原作ファンからは否定的な声が相次いだ。

 

初回放送では「イカゲーム」という言葉がトレンド入り。
というのも、トモダチゲームの「運営」側の人間の格好が、昨年大旋風を巻き起こした韓国ドラマ『イカゲーム』の警備員にあまりに似ていたためだ。
原作は2013年末から連載中であり、当然“イカゲームの警備員ふう”の人間など出てこない(そもそもここで運営スタッフは姿を見せない)。
『R4』では主人公たちが一度逃げようとし、この“警備員”が美笠天智(佐藤龍我)を撃つという『イカゲーム』の第1ゲームを彷彿とさせる展開があったが、もちろんこれも『R4』オリジナルだ。
デスゲーム的な内容も共通することから、原作を知らない層からは「これってイカゲームのパクリなの?」という声も出てしまった。

 

『R4』では、他局にあたる日本テレビでかつて放送されていた『火曜サスペンス劇場』のあの有名なオープニングテーマによく似た劇伴もたびたび耳にした。
制作側はおもしろいと思ってやっているのだろうが、正直こうした安直なパロディに何の意味があるのかまったくわからなかった。
意味不明といえば、毎回、菊池風磨ら運営の人間がただガツガツと食事を取るだけの“飯テロ”シーンでドラマのラストを飾る演出も、あれは一体何だったのだろうか。

 

『R4』は全8話で展開されたが、後半はかなりオリジナル色も増した。

 

2017年版ではドラマ4話を使って描いた第1ゲームを、『R4』では第1話だけで終わらせるなど、かなりスピーディではあったが、当初は大筋は原作どおりに進んだ。
2017年版では省略された第2ゲーム「陰口すごろく」も『R4』にはあったぐらいだ。

 

しかし後半戦となる第5話では、第4ゲームをすっ飛ばして「大人のトモダチゲーム」へと話が飛び、「友情の檻ゲーム」がスタート。
これが第8話まで続くことになるが、ここで登場人物が大幅に変更。
原作と違い、第3ゲームで戦った「Kグループ」の全員が参加するのだ。
本来は紫宮京(美 少年・藤井直樹)ひとりだけが参加する。

 

Kグループは5人全員を美 少年とHiHi Jetsのメンバーで演じていたので、1.5話ぶんしかない第3ゲームだけで退場というわけにはいかず、出番を増やす必要があったのだろう。
そもそも、『R4』は主人公の友一を美 少年の浮所飛貴が演じているにもかかわらず、「浮所主演」という表現が一切なく、「美 少年とHiHi Jetsの共演」といった言い回しなのが謎だったが、建前上、浮所以外も“同格”という扱いにしたかったのではないか。

 

Sexy Zoneの菊池風磨が演じた火室ノベルもドラマオリジナルだ。
ノベルは主人公・友一の“兄”という設定だったが、おそらく原作において次のゲームから登場するある人物の設定を意識したものだろう。
「トモダチゲームの主催者」ということになっていたり、全然違うキャラクターだが……。

 

『R4』の最終回は、「友情の檻ゲーム」を終えた後に完全オリジナル展開を迎え、ノベルが“ラスボス”として友一に「トモダチ絶交ゲーム」を仕掛ける。
これが、Cグループにいる裏切り者を見破れというヌルい内容で、オチは“この4人の中に真の裏切り者は誰もいない。
ノベルが渡した鍵の数は4つで、本当に裏切り者がいるなら渡す鍵は3つにするはずだ”というもの。
友一が出す結論も、第2ゲームのラストの展開に似たもので、意外性はまったくない。

 

運営とつながっていた“裏切り者”については、その後の原作の展開を多少意識してはいるようだが、やはりまったく内容が違う。
ほかにも「トモダチゲーム」の考案者の設定が変わっていたり、終盤はすっかり“原作無視”といえるものだった。

 

もっとも、擁護できる部分はある。
原作はまだ連載中で、「トモダチゲーム」の目的など肝心なことはまだ何ひとつわかってない状況。
ある程度はオリジナルで終わらせるしかないのだから。
とはいえ、最終回に完全なオリジナル展開を用意するのは思い切ったものだ。

 

しかし、原作とはまったく違う作品として『トモダチゲームR4』を受け止めると、少なからず美点も浮かんでくる。

 

原作の友一はどんどん二重人格的なキャラクターになっていくが、『R4』の友一は、“黒い”一面もありつつ、やはり友情を信じたいという葛藤を抱いた人物像になっており、ドラマ自体も、友情を尊重した爽やかなラストを迎えた。
ドロドロに因縁が絡み合う原作では、友一だけでなく、他のキャラクターもどんどんと闇の部分を見せていくため、読み進めていくうちに滅入ってくる面があるが、このドラマは、「その友情は本物か?」という「トモダチゲーム」の原点をポジティブに捉え、原作とは違う『トモダチゲームR4』としてそれなりにきれいにまとまったように思う。
第1話で天智が撃たれた部分など、オリジナル要素が最終回の伏線になっていたのもよかった。

 

また、原作は現在20巻まで出ているが、ようやく最終ゲームまで来たものの、まだまだ終わりが見えず、間延びしてしまっている印象もある。
加えて一部キャラが超人化しつつあったり、話が進むにつれて明らかになる“真実”の量も多く、すんなり理解するには人間関係が複雑化しすぎているなど、長く続けている弊害も感じられるので、ドラマオリジナルで完結させたのは、ある意味正解かもしれない。

 

「友情の檻ゲーム」の最後、友一と紫宮が勝利宣言をする際、彼らがなぜかタキシードを着て、アイドルのごとく華々しく壇上に現れ、紙吹雪が舞うトンチキな演出にはさすがに失笑してしまったが、「ジャニーズドラマ」だと考えれば、むしろ正しいと言えるのかもしれない。
しかし、「ジャニーズドラマ」として『トモダチゲーム』をリメイクしたかったのであれば、無理に原作のストーリーを捻じ曲げるより、一部設定とルールを拝借する形で、キャラクターもストーリーもすべて完全オリジナルで作ってしまったほうがよかったのではないだろうか……というのが正直なところではある。
原作にはスピンオフ的なエピソードもあったのだから。

 

なお、一部キャストの演技が酷評されているが、普段はおバカキャラということが想像がつかないくらい、“知性派”の天智を演じきった佐藤龍我は、やはり俳優としての可能性を感じさせた。
ゲームの進行役・マナブくんの声を担当したオズワルド・伊藤俊介も持ち味をうまく出していてなかなかよかった。
妹の伊藤沙莉同様、声優の仕事も今後増えるかもしれない。

 

ドラマの最後は、友一にふたたび「トモダチゲーム」への招待状が届くところで終わった。
原作がまだ続いているとはいえ、はたして原作とはまったく違う形に終着した『トモダチゲームR4』の続編はつくられるだろうか。