高橋一生と柴咲コウの共演で話題のTBS系金曜ドラマ『インビジブル』の視聴率がふるわない。

 

初回の世帯平均視聴率は9.4%(関東地区・ ビデオリサーチ調べ/以下同)だった。
しかし第2話、第3話と7%台に落ち、第4話からは6%台に突入。
5月27日に放送された第7話の世帯平均視聴率は5.7%で、同ドラマの最低記録を更新した。
これほどの数字は、ここ数年のTBS金曜ドラマでもあまり例がない。

 

過去の金曜ドラマで視聴率が5%台まで落ちた例を見ると、ジャニーズWEST・重岡大毅が主演した2021年の夏ドラマ『#家族募集します』が挙げられるが、東京オリンピックの影響を受けて途中およそ1カ月近く放送が休止などの事情もあったため、致しかたない面は大きい。

それ以前となると、2019年の秋ドラマ『4分間のマリーゴールド』第6話、2018年の夏ドラマ『チア☆ダン』第5話などがある。
2017年の夏ドラマ『ハロー張りネズミ』の第4話は4%台にまで落ち込んだほか、2016年の夏ドラマ『神の舌を持つ男』は全話の平均が5%台で、第6話では3.8%という衝撃的な数字を出したのに比べれば、まだマシと言えるかもしれないが、第5話と第7話の二度、5%台を叩き出している『インビジブル』の視聴率は、金曜ドラマ枠において“最低ランク”と言えるかもしれない。

 

もっとも、金曜22時台の「金曜ドラマ」には競合とぶつかりやすい宿命がある。
ギャラクシー賞に輝くなど昨年大きな話題を呼んだ『最愛』ですら、10%を超えたのは最終回のみだったように、近年は2ケタ台を取るのも難しい。
中でも同枠の視聴率に大きく影響を及ぼしているのが、日本テレビ系列で21時~23時に放送されている「金曜ロードショー」だろう。

 

前述の6%を下回った回の「金曜ロードショー」のラインナップを見てみると、『#家族募集します』が5%台となった第3話(8月13日放送)と第5話(8月27日放送)は、3週連続放送の「夏ジブリ」と重なっており、前者は『もののけ姫』、後者は『風立ちぬ』とぶつかっていた。
いずれも10%超えで、特に『もののけ姫』は11度目の放送ながら13.8%を記録と相変わらずの強さだ。

 

4分間のマリーゴールド』第6話(11月15日放送)の時は『アナと雪の女王』(3度目の放送で12.9%)、『チア☆ダン』の第5話(8月10日放送)の時は『ハウルの動く城』(6度目の放送で14.5%)、『ハロー張りネズミ』の第4話(3月3日放送)の時は『ジュラシック・ワールド』(地上波初放送で13.4%)があった。

 

だが、『インビジブル』においては、これだけでは説明がつかないのも事実。
初の5%台を記録した第5話(5.9%)が放送された5月13日の「金ロー」は、『ローマの休日』で9.8%。
14度目の放送でこの数字はすごいが、脅威と言えるほどではない。
実際、「金ロー」で4月29日に放送された『魔女の宅急便』は10.1%だったが、裏の『インビジブル』第3話は7.2%と、初回をのぞいて最高の数字を記録している。
ましてや、これまでで最低となった『インビジブル』第7話(5.7%)が放送された5月27日の「金ロー」にいたっては、スペシャルドラマ『極主夫道 爆笑!カチコミSP』の放送回で、視聴率は6.7%に留まっている。

 

『インビジブル』は配信ではまずまず好調だ。
「Paravi」の週間ランキングや月間ランキングではいずれも総合3位を記録しており、「TVer」での再生も、回数は発表されていないが、総合ランキングの推移を見るかぎり順調なようだ。
だが、たとえば『最愛』は初回放送の無料見逃し配信再生回数がTBSドラマ歴代1位だったことが放送中に発表されていたが、『インビジブル』に同様の発表が見受けられないことを考えると、好調ではあっても、記録的な再生回数とまではいかないことが窺える。
そして歴代初の2000万回再生を記録するなど見逃し配信の勢いがすごかった『最愛』も、テレビ視聴率はここまで悪くはなかった。

 

『インビジブル』はなぜここまで伸び悩んでいるのだろうか?

それはひとえに、“人を選ぶ作品”だからかもしれない。
高橋一生、柴咲コウ、永山絢斗といった主要キャストはそれぞれ魅力あるキャラクターを演じている。
しかし、放送開始前に多くの人が想像していたのはおそらく骨太のシリアスなストーリーであり、実際の内容は意外とチープだ。
リアルなドラマというよりアニメ的な展開も多く、そこにガッカリして、序盤で脱落したという声も少なくない。
深く考えずに観る作品なのだと理解すればそのノリも楽しめるが、「高橋一生×柴咲コウ」の期待値が高すぎたのかもしれない。

 

また、細部も雑だ。「裏社会を牛耳り、あらゆる凶悪犯罪者たちの取引を仲介する犯罪コーディネーター」と説明される“インビジブル”だが、一体どうやってそんな地位を確立したのか、なぜ国際的に警察組織にスルーされているのか、といった部分はおざなりで、“すごい奴だからすごい”の論理で突き通される。
主人公の志村(高橋一生)をずっと危険視していた猿渡監察官(桐谷健太)もいつの間にか協力的になっていたり、ストーリーが展開される上でいろいろな要素が置き去りになり、ご都合主義的な展開も目立つ。
そのためか、サスペンス系作品では定番の視聴者による考察も盛り上がっていない。
視聴者をハラハラさせる演出も、高橋一生らの演技を輝かせはするが、ストーリー上の要素としてはどれも表層的でどこか短絡的だ。
こうした積み重ねが、想像以上の視聴率の不振につながっているのかもしれない。

 

もっとも、テレビ視聴率がいまひとつでも、視聴者から支持を集め、見逃し配信が好調な作品は、最終回で数字を上げる傾向にある。
『インビジブル』もまた、最終回に向けて追い上げていってほしいものだ。