メディアには大きく取り上げられていないが、異例の表明に業界が騒然としている。

 

ジャニーズ事務所が4月21日、公式ホームページで「ファンの皆様・関係者の皆様へのお知らせ」というタイトルで声明文を発表した。
小菅宏氏の著書「女帝 メリー喜多川」(青志社)に対する抗議だった。
芸能担当記者は衝撃を隠せない。

「今までジャニーズに関する非公認の本はたくさんありました。
事務所はかつてタレントの住所を載せた本を販売した出版社をプライバシー侵害で訴えて勝訴したことがありますし、週刊誌の記事に訴訟を起こしたこともありましたけど、抗議文だけを公に出すのは異例です。
『女帝 メリー喜多川』を読んだ限り、一作家が綴ったノンフィクションだと思いました。
でも、ジャニーズとしては触れてほしくない話題だったのでしょう。
訴えて勝てるような内容はないと考えて、抗議文に留めたのかもしれません」

 

小菅氏は1970年代に集英社の社員として「週刊セブンティーン」を編集しており、ジャニー喜多川氏やメリー氏と関わりを持った。
本には、70年11月15日早朝7時にメリー氏からかかってきた電話の内容が記されている。

<「今週号の発売をストップしてちょうだい。聞いている? コスガさん」>(< >内は引用。以下同)

<「何ですか今週号は。***グループが載っているじゃないの。彼らと同じ号なんてウチの子は載せられない。だからすぐ***グループを除外するか、発売を止めてちょうだい」>

その号には、ジャニーズ事務所のフォーリーブスの個別特大ピンナップがあったという。
小菅氏はこの日、ジューク・ボックスというジャニーズのグループのロケがあったため、早朝から会社にいた。

<「メリーさん、そんなこと(発売中止)できません」>と突っぱねると、彼女は<「コスガさん、発売を中止するの? 今日のウチの子の撮影を中止するの? どっちか判断してちょうだい」>と言ったという。
この結末は本に譲るが、メリー氏の“交渉術”が具体的に明かされている。

「メリー氏の辣腕ぶりは一部メディアで何度も伝えられてきましたが、実名で詳細なやり取りを明かした人はいなかったと思います。
読み応えがありますよ。
良くいえば交渉術、悪くいえば圧力のかけ方がリアルに感じ取れます」(前出の芸能担当記者)

 

事務所は小菅氏とメリー氏の関係性について、声明文で以下のように書いている。

「著者である小菅宏氏は、本書籍内及び本書籍紹介文におきまして、ご自身と故ジャニー喜多川並びに故藤島メリーとの関係について事実と異なり、仕事上の関係性が50年にわたって続いていた、と読み手が誤認するような表現で言及されていることから、正確性に欠けております。
実際には、小菅氏が出版社の担当編集者を務めていた40年ほど前が事実上、関わりがあったということができる最後の時期であり、その後のやりとりは数えることができる程度でございます」

 

版元である青志社のホームページには「女帝 メリー喜多川」について、

「取材担当50年 元大手出版社編集者 小菅宏[作家]」

「「SMAP」「嵐」をめぐる真相と決断、一途なる経営理念。年商1千億円。ジャニーズ帝国を築き上げた鉄の女の誰も書けなかった禁断の素顔」

「ジャニーズ事務所の半世紀を超える原動力の根源は晩年に女帝と呼ばれたメリー喜多川の圧倒的な力を抜きにして語れない。本著はこれまで明かされなかったメリーの貪欲な野望の生きざまを、週刊誌の担当編集者として(後に物書きとして独立)仕事をしてきた著者の、50年にわたる全記録である」

などと紹介している。

 

再び前出の芸能担当記者が解説する。

「ジャニーズ事務所は“50年”という表現に突っ込んだ。
でも、出版社は周辺取材も含め、50年に渡って見てきたという意味で記載したのでしょう。
なかには誤認する人もいるかもしれませんが、それを根拠に正確性に欠けているという主張は無理があるように感じます。
本を読めば、小菅氏とメリー氏のやり取りは70年代が中心で、その後はたまに交流があった程度だと掴めます。
なのに、ジャニーズ側はわざわざそのことをなぞっている。
逆にいえば、突っ込み所がそれしかなかったのかもしれない。
声明文は具体的な本の内容についての抗議はなく、ファンの情緒に訴えているように思います」

 

しかも、書籍内で小菅氏は<本著で私が記すメリーの実像は、約半世紀にわたる「切れ間のある付き合い」の結果でしかないが、素顔の一部と信じてもらえるかは読者のご判断に任せたい>とも明言している。

「女帝 メリー喜多川」はジャニーズ事務所を一大企業に育て上げたメリー氏の交渉術や思想について、実際に触れ合った人物がリアルに書いた類を見ない一冊となっている。
しかし、新聞の書評には載りそうもない。

 

大手新聞関係者が声を潜める。

「朝日新聞や毎日新聞は系列会社の雑誌でジャニーズを表紙に起用しています。
読売新聞も『読売中高生新聞』でジャニーズJr.のメンバーが月替わりでコラム、産経新聞は夕刊で関西ジャニーズJr.の『ごっつええやん!!』というページがある。
日本経済新聞もグループ会社の雑誌『日経BP』によくジャニーズが出ています。
ですから、各紙の書評に『女帝 メリー喜多川』が掲載されることはないでしょう。
新聞社側はもし事務所にタレントを引き下げると言われたら困る……と案じ、忖度するはずですから」

 

SNSでは公式サイトの声明文を素直に受け止めるファンもいれば、鵜呑みにしないファンもいる。

「メリー氏がSMAP解散の原因を作ったと思われているため、彼らのファンは声明文を懐疑的に見ていますね。
King & PrinceやSnow Manなど現役グループのファンには肯定的に考えている人がたくさんいます。
他方で、メリー氏のやり方に疑問を持ってきた人たちもいるみたいで意見は割れています。
また、ジャニーズ事務所が『ファンの皆様・関係者の皆様へのお知らせ』とわざわざ“関係者の皆様”と書いたのは、二度とこの系統の本を出版されたくないからでしょう。
釘を刺したんだと思いますよ」(前出の芸能担当記者)

 

異例の声明文を出したことで、業界内のザワつきはしばらく収まりそうにない。