4月8日の最終回に向けて盛り上がりを見せるNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(以下、『カムカム』)。

 

主題歌として大ヒットしているのが、AI(40才)の歌うバラード『アルデバラン』だ。
この主題歌をめぐってNHK内部で重大な疑惑が持ち上がっているという。

 

通常、朝ドラの主題歌は放送の1年以上前にドラマのタイトルやテーマが決まり、その方向性に合わせてNHKがアーティストを選定し、オリジナル曲の制作をレコード会社に依頼するとされる。

「特にこの数年は、主題歌を手がけるレコード会社に不自然な偏りがあり、一部のレコード会社との露骨な“癒着”が疑われていました。
民放ならいざ知らず、受信料で運営される公共放送の事業者が、特定の企業やアーティストを優遇することはあってはなりません」(NHK関係者)

 

確かに『カムカム』から過去7作のうち、5作の主題歌が大手レコード会社「ユニバーサルミュージック(以下ユニバーサル)」が制作した曲だった。

 

キーマンとなっているのは、外部コーディネーターのA氏だという。

「歌手やアーティストだけでなく、NHKのドラマのキャスティングにも大きな影響力を持つという触れ込みで『NHK公認ドラマ音楽プロデューサー』と記された名刺を持ち歩いています。
ここ数年はA氏を通さなければ、朝ドラの主題歌に選ばれないというのが音楽業界で暗黙の了解とされてきたのです」(前出・NHK関係者)

 

主題歌の選定に大きな力を持つA氏はどんな人物か。
別の音楽業界関係者が声をひそめて打ち明ける。

「30年以上前から芸能事務所の社長としてNHKに出入りしていた70代前半の男性です。
80年代に放送された『レッツゴーヤング』などの歌謡番組を通じて木田幸紀・前NHK専務理事の知遇を得た。
2人の蜜月関係は長く続き、のちに木田さんがNHKの総局長に上り詰めると、NHK内部でA氏の存在感がますます大きくなっていきました」

 

木田氏は1977年にNHKに入局し、1987年に大ヒットした大河ドラマ『独眼竜政宗』の演出を担当するなどドラマ畑を歩んだ。
2020年に退任するまで専務理事や総局長などの要職を歴任し、現在はワーナーミュージックの顧問を務める。
A氏が朝ドラの主題歌選びに介入するようになったのは、木田氏が現場トップにいた時期と重なる。

 

最大の問題は、主題歌選定において“巨額の謝礼”が必要だと囁かれていることだ。

 

渦中のA氏を直撃すると「ぼくが主題歌を決めているなんてウソですよ」と反論しつつ、60分にわたって内部事情を赤裸々に暴露した。

「朝ドラの主題歌は、各レコード会社の担当者がアーティストをNHKにエントリーすることから選定が始まる。
『カムカム』のときは、NHKの部長さんから『(AIは)どうだ?』と言われたので、ぼくが間に入って進めました。

ぼくを通した方が強い場合は、ぼくが動きます。
ドラマのプロデューサーは(音楽業界の)背景がわからないから、自分では決められないじゃないですか。
だから、ぼくなりにアーティストの評価をさせていただくんです」

 

「NHK公認ドラマ音楽プロデューサー」と記された名刺についてはこう語った。

「レコード会社がNHKの言うことを聞かないから、内部調査をするために木田さんに何か黙らせる方法はないかと言われた時に、17枚だけ限定で配ったんです。
NHKの当時の上の方は承知の上で。『俺がやってるんだから、お前ら嘘つくんじゃないぞ』と。
どこに何枚配ったかも全部覚えてます」

 

最大の問題である、金銭の授受についてもこう認めた。

「NHKからは一銭ももらいませんが、レコード会社からは謝礼をいただきます。
額は言えませんが、どのレコード会社も全部一律です。
一部の相場では『2000万~3000万円』という話もありますが、それよりも安いですよ。
民間と民間のやりとりなので、何の問題もありません」

 

公共放送で毎朝流れて、国民が耳にする主題歌の選定の裏で、多額のカネが動いた責任は、外部コーディネーターに“実権”を持たせたNHKの杜撰さ、危機管理能力のなさにあるのではないか。

 

すでにこの問題はNHK中枢の知るところとなり、局内に激震が走っているという。
A氏と近い木田氏を直撃すると、困惑気味にこう答えた。

「A氏はただの仕事仲間で、NHKから何かをお願いしたり、名刺を持つことを許可した事実はない。
(レコード会社との金銭の授受は)NHKはいっさい関知していなかった」

 

ユニバーサルは
「NHKとのドラマのタイアップ等については、いずれも契約に基づいて法令の範囲内で適切に行っております。
内容の詳細については守秘義務の観点から、回答は差し控えさせていただきます」(広報部)
という。

 

NHKにA氏が主題歌選考にかかわった事実関係や、レコード会社から報酬が支払われていた経緯を尋ねると、次のように回答した。

「ドラマ主題歌のアーティストについては、多くの方々から推薦を受けることはありますが、NHKが決定しています。
A氏に『NHK公認ドラマ音楽プロデューサー』の肩書や名刺を許可した事実はありません。
その他のご指摘のようなことについては承知しておりません」

 

朝ドラは国民の受信料を原資とした多額の制作費によって制作されている。
そのドラマを舞台に多額のカネがやりとりされていることをNHKが把握していないこと自体が問題だろう。

 

10日発売の『女性セブン』では、A氏が語ったNHKとの“蜜月”や、GReeeeNが朝ドラ『エール』(2020年)の主題歌に決まった背景、『半分、青い。』(2018年)の主題歌をギリギリで断っていたアーティストの実名など朝ドラ主題歌に関する裏事情について詳報している。