木村拓哉2年ぶりの連続ドラマ『未来への10カウント』が、テレビ朝日系にて4月14日よりスタート。
大河ドラマ『青天を衝け』での徳川慶喜役が記憶に新しい草なぎ剛は、 ’23年1月クールのカンテレ・フジテレビ系において『銭の戦争』『嘘の戦争』に続く復讐シリーズの第3弾に主演することが発表された。

 

そして稲垣吾郎は’20年に朝ドラ『スカーレット』、香取慎吾も’21年に『アノニマス〜警視庁“指殺人”対策室』で連ドラ復帰をしており、SMAP解散後はドラマ界と距離を置かれていた新しい地図の3人が、再び最前線で活躍する動きが活発化してきている。

 

中居正広も含め、’90~’00年代のドラマ黄金時代の一翼を担っていたSMAPの5人。
30年にもわたりコンスタントに主演作が制作され続けた作品の数々はいま見ても色あせず、語り継がれる名作も多い。

「これまで数多くのジャニーズのグループのメンバーたちがドラマに主演してきましたけど、SMAPほどそれぞれの個性が際立っていたグループはないと思います。
1人ひとりについてだけでも延々と語れちゃう(笑)」

と語るのは、彼らと同じ時代をドラマウォッチャーとして伴走してきた漫画家のカトリーヌあやこさん。
際立つ個性とはいかなるものなのだろうか? 

 

そこで、20代以上の一般女性600人にもう一度見たいSMAPドラマアンケートを実施し、メンバーごとにベスト3を発表。
カトリーヌさんとともに数々の名作をプレーバックしてみた!

 

【木村拓哉】
1位 ロングバケーション (’96年 フジテレビ系)

2位 HERO (’01年ほか フジテレビ系)

3位 あすなろ白書 (’93年 フジテレビ系)

木村の作品の中でいちばん支持を得たのは『ロングバケーション』(’96年、フジテレビ系)。
木村演じる主人公の瀬名と、山口智子扮するヒロインの南の恋愛を描いた月9作品で、“放送日の夜はOLが街から消える”と言われたほどの大ヒット作。

「当時高校生で、キムタクのかっこよさにドキドキで毎週楽しみだった」(42歳・茨城)
「毎週ビデオに録画していました。当時を思い出したらもう一度見たくなった」(47歳・兵庫)

 

第2位は木村が型破りな検事・久利生を演じた『HERO』(’01年ほか、フジテレビ系)。

「木村くんと松たか子さんのコンビが最高でした」(38歳・高知)
「再放送を見てどハマり。友達と映画も見に行きました」(27歳・愛知)

 

第3位は、石田ひかり演じる主人公のなるみや、木村演じるお調子者だが根は優しい青年・取手ら大学生5人の友情と恋愛を描いた『あすなろ白書』(’93年、フジテレビ系)。

「初々しい木村くんと、あすなろ抱きをまた見たい」(49歳・神奈川)

 

そんな木村のこれまでの作品について、カトリーヌさんはこう分析する。

「木村さんは『あすなろ白書』でブレイクして以来、当時の女子の夢の具現化みたいな存在でした。
『ロングバケーション』のピアニスト、『ビューティフルライフ』(’00年、TBS系)のカリスマ美容師というようなラブストーリーにおける王子様の役割ですね。

ただ、’00年代に入ると王子様から一線を引き、さまざまな職業を演じていきます。
『HERO』の検事、『GOOD LUCK!!』(’03年、TBS系)のパイロット、『プライド』(’04年、フジテレビ系)のアイスホッケー選手、『エンジン』(’05年、フジテレビ系)のカーレーサー、’08年の『CHANGE』(フジテレビ系)ではついに総理大臣にまで上り詰めちゃった(笑)。

当時はどんなドラマを作るかではなく、キムタクにどんな職業をやらせたら面白いかという視点で企画が考えられていたような気がします。
というのも木村拓哉という役者が、平成以降唯一のスター俳優だったからなんです。
何を演じてもキムタクと揶揄されることも多いですが、それってスターの証でもあるわけですよ。

石原裕次郎さんしかり高倉健さんしかり、往年のスターというのは役よりもその人自身の個性が色濃く出ていました。
だからといって何をやっても石原裕次郎だと非難されることはなかったじゃないですか。
平成以降、そういう役者は木村さんしかいなかったから目立つだけで、スターというのは本来そういうものだと思います」

 

【中居正広】
1位 白い影 (’01年 TBS系)

2位 ATARU (’12年 TBS系)

3位 砂の器 (’04年 TBS系)

本人いわく演技は苦手ということで、最近はドラマで見かけることはほとんどなくなってしまったが中居も’90~’00年代は主演俳優として活躍。

 

第1位となったのは中居が影のある外科医を演じた医療ドラマ『白い影』(’01年、TBS系)。

「中居くんがシリアスな演技をしていて、バラエティーとのギャップにキュンときた」(56歳・滋賀)
「中居くんの演技もストーリーも最高でした」(43歳・東京)

 

第2位は、サヴァン症候群という特殊な能力を持ったチョコザイを演じた『ATARU』(’12年、TBS系)。

「中居くんの演技力に衝撃を受けた」(49歳・東京)
「どのドラマも好きだけど、中居くんチョコザイがめっちゃかわいかった」(55歳・富山)

 

第3位は『砂の器』(’04年、TBS系)。
天才ピアニストの和賀に扮し、ある宿命を背負った男の悲しみを描く松本清張の同名小説を現代風にアレンジしドラマ化。

「普段なかなか見ることができない中居くんの真剣な表情がよかった」(42歳・青森)

 

「初期の木村さんが少女漫画なら、中居さんは少年・青年漫画の主人公というイメージがあります。
『味いちもんめ』(’95年ほか、テレビ朝日系)の料理人にしても『ナニワ金融道』(’96年ほか、フジテレビ系)の取り立て屋にしても、男の世界のなかの下っ端というか後輩キャラで、そういう男くさい世界が似合っていました。

ただ、TBSだけが中居さんに宿題を出すんですよ。『白い影』や『砂の器』という名作のリメイクで、田宮二郎さんや田村正和さんが演じていた役を振ったり、北川悦吏子さん脚本の『最後の恋』という王道中の王道のラブストーリーで、恋愛に対しては特にシャイな中居さんに、常盤貴子さんと海の中で抱き合ってキスするみたいなことをさせる。
TBSの主演ドラマを見ると、中居さん、頑張ってるなぁって(笑)。

そんな中でも特におすすめは『ATARU』です。
チョコザイという特異な記憶力を持つサヴァン症候群の青年を演じていたのですが、中居さん自身の猪口才な感じがよく出ていたハマり役でした。
SMAPのコンサートでこのキャラクターに扮するくらいご本人もお気に入りの役で、内容も謎の闇組織が出てきたりと中二病的要素が満載。
すごく遊び心のある楽しいドラマなので、未見の方はぜひ見ていただきたいです」(カトリーヌさん、以下同)

 

【稲垣吾郎】
1位 二十歳の約束 (’92年 フジテレビ系)
2位 スカーレット (’19年 NHK)

3位 TAKE FIVE〜俺たちは愛を盗めるか (’13年 TBS系)

主演作も多い一方、クセのあるバイプレーヤーというイメージも強いのが稲垣吾郎。

 

第1位は牧瀬里穂演じるヒロインの夕希と、稲垣演じる純平の恋愛を描いた『二十歳の約束』(’92年、フジテレビ系)。

「里穂ちゃんが吾郎ちゃんに“ヒューヒューだよ!”という場面が衝撃的だった」(41歳・愛知)
「ゴローちゃんがかわいかった。初々しい姿をまた見てみたい」(42歳・秋田)

 

第2位は朝ドラ『スカーレット』(’19年、NHK)。
途中からの出演でヒロインを見守る医師の大崎を演じた。

「久しぶりにドラマでゴローさんが見れてうれしかった」(53歳・北海道)
「優しい医師役に朝からほっこりしました」(49歳・福岡)

 

第3位は『TAKE FIVE〜俺たちは愛を盗めるか』(’13年、TBS系)。
悪いやつから大金を奪う義賊集団“TAKE FIVE”の活躍を描く本作で、メンバーである岩月を演じた。

「稲垣さんの演技にさらに磨きがかかっていてかっこよかった」(56歳・愛知)

 

「初期の主演作『東京大学物語』(’94年、テレビ朝日系)で演じた妄想高校生の変態性もそうですが、クールそうに見えて、かなりヘンという役がお上手で、そういう意味でハマるのが名探偵役。
テレビ朝日で明智小五郎、フジテレビで金田一耕助と日本の2大名探偵を演じていますが、頭脳明晰でときにエキセントリックというキャラクターがぴったりなんですよね。

そんな稲垣さんの転機となった年が2010年。
映画『十三人の刺客』で極悪非道な殿様役を好演する一方で、竹野内豊&上戸彩主演の月9『流れ星』(フジテレビ系)では借金クソ野郎な上戸さんの兄を演じ、今までのイメージをガラッと変えました。
歌舞伎でいう色悪みたいな、悪人なんだけどゾッとするような色気があって、目が離せない。
そんな新たな魅力を手に入れた。『流れ星』のお兄さん役も結局、妹のことを思っていたのかはよくわからなかったし、どこまでも人を欺く、そのひょうひょうとした感じも稲垣さんの持ち味だなと思います」

 

【草なぎ剛】
1位 僕と彼女と彼女の生きる道 (’04年 フジテレビ系)

2位 任侠ヘルパー (’09年 フジテレビ系)

3位 銭の戦争 (’15年 フジテレビ系)

昨年は映画『ミッドナイトスワン』で映画賞を総なめにし、あらためてその演技力の高さが評価された草なぎ剛。

 

その第1位は『僕と彼女と彼女の生きる道』(’04年、フジテレビ系)。
父の徹朗(草なぎ)と娘の凛(美山加恋)の親子の絆を描いた感動作。

「再放送で何度も見ましたが、毎回泣けました」(28歳・埼玉)
「草なぎくんの優しい眼差しと、子役の子とのやりとりが感動的」(53歳・神奈川)

 

第2位は草なぎ演じる極道の組長・彦一が、自らの身分を隠し介護ヘルパーとして働くことになる『任侠ヘルパー』(’09年 フジテレビ系)。

「いい人の役柄が多かったので、そのギャップがよかった」(46歳・大阪)
「子どものころに見て、草なぎくんの演技がすごいなって思った印象的なドラマ」(28歳・愛知)

 

第3位はエリートサラリーマンだった富生(草なぎ)が、親の借金でホームレスまで転落しどん底から這い上がろうと奮闘する『銭の戦争』(’15年、フジテレビ系)。

「ストーリーがすごく良くて、草なぎくんの演技が抜群だった」(58歳・福岡)

 

「草なぎさん以外の4人は自分の個性や持ち味を生かした役を演じてきていますけど、彼はこと芝居となると草なぎ剛を完全に消し去る。
いわゆる憑依型の役者さんで、そこに本来の草なぎ剛は全くいないんです。
もちろん、初期の『いいひと。』や『成田離婚』(ともに’97年、フジテレビ系)なんかでは草なぎさんっぽい誠実さを前面に出した役を演じてはいました。

そんな彼が役者として開眼したのが、’03年の『僕の生きる道』(’03年、フジテレビ系)から『僕と彼女と彼女の生きる道』、『僕の歩く道』(’06年、フジテレビ系)と続く“道シリーズ”です。
抑制されたトーンで淡々と物語が進んでいくというのが本シリーズの特徴ですが、余命1年の教師、娘の扱いに困るシングルファザー、自閉症の青年という全く異なった役どころをその世界観の中でリアルに表現していました。

もう1つの魅力が、巧みな二面性の表現であると思うんです。
『任侠ヘルパー』という作品が象徴的なのですが、ヤクザの冷酷さとヘルパーの情の深さをひとつの役柄の中で同時に表現することができる。

これより数年前に『恋に落ちたら~僕の成功の秘密~』(’05年、フジテレビ系)という作品があって、ネジ工場を経営する善人が工場の倒産の憂き目にあい、堤真一演じる冷徹な企業家と知り合い、成り上がっていく話なんですけど、その過程で彼がどんどん嫌な人間になっていくんですね。
成功した彼が高級ワインを傾けるシーンで、グラスに映った顔がものすごく醜くて……
人として地に落ちたところをその表情ひとつで見事に表現していて、度肝を抜かれました。
演技力に関しては、草なぎさんは本当にずば抜けていると思います」

 

【香取慎吾】
1位 ドク (’96年 フジテレビ系)
2位 人にやさしく (’02年 フジテレビ系)

3位 西遊記 (’06年 フジテレビ系)

香取慎吾は5人の中では唯一大河ドラマの主演を経験しているなど、役者としてのスケールの大きさはいちばん。

 

そんな香取の第1位は『ドク』(’96年、フジテレビ系)。
日本語教師の雪(安田成美)とベトナム人の生徒・ドク(香取)のラブストーリー。

「もの静かで頑張るドクの姿が泣ける」(59歳・東京)
「ドクの恋愛がもどかしくて、それがまたいい!」(42歳・宮崎)

 

第2位は、原宿の一軒家に住む男性3人組(香取、松岡充、加藤浩次)が、ひょんなことから両親に捨てられた子ども(須賀健太)を育てることになるドタバタ子育てドラマ『人にやさしく』(’02年、フジテレビ系)。

「慎吾ちゃんと須賀くんのシーンが癒された」(47歳・兵庫)
「ときに泣けて元気をもらえるドラマ」(51歳・群馬)

 

第3位は香取が孫悟空を演じた月9ドラマ『西遊記』(’06年、フジテレビ系)。

「さすが香取くんって思った作品。子どもとハマって見てました」(48歳・三重)

 

「香取さんは突き抜けたキャラをやらせたら右に出るものはいないんじゃないでしょうか。
ある意味、香取慎吾は人間を超えている(笑)。『こち亀』(’09年、TBS系)の両津勘吉を演じていますが、ギャグマンガのキャラクターすら説得力をもって演じることができるのが香取さんの役者としての絶対的な個性だと思います。

ただ、10代の香取さんに私が感じた魅力は、それとは全然違うものでした。
『沙粧妙子・最後の事件』(’95年、フジテレビ系)というサスペンスの名作があって、それに18歳の彼が猟奇殺人犯役でゲスト出演したんです。
ものすごく狂気をはらんだ役で、「妙子、キスしよう」って浅野温子さんに迫りながら、彼女に頭突きするんですよ。

闇の部分とあっけらかんとした香取慎吾らしさを見事に融合させていて、この年でこの表現ができるのはスゴいなと驚きました。
その後、『未成年』(’95年、TBS系)で知的障碍者を、『ドク』でベトナム青年をというふうに木村拓哉のナチュラルな芝居とは真逆のベクトルの芝居で役者としての評価を高めていきます。

でもそこから路線変更しちゃうんですよ。
『合い言葉は勇気』(’00年、フジテレビ系)などの三谷幸喜作品や『西遊記』の孫悟空のようなコメディー系のキャラものへと。その両方をできるのがスゴいんですけど、私としてはクセのある役柄を演じていた初期の路線をもうちょっと見たかったなという思いはありましたね。
とにかく、役の幅の広さではSMAP随一、いや日本一かもしれません(笑)」

 

振り返って数えてみると、この30年でSMAP関連ドラマは150作品をゆうに超える。
となると、中には珍品ともいえる“迷作”もあるわけで……。
オススメをあげてもらった。

「まずオススメしたいのが木村拓哉の『安堂ロイド』(’13年、TBS系)。
あれだけいろんな職業をやって、総理大臣までいっちゃったから、もう万策尽きたんでしょうね。
いっそのこと人間じゃなくてアンドロイドにしたら? というヤケ気味な企画がなぜか通っちゃったみたいな(笑)。
だって、恋人を救うために百年後の未来からアンドロイドがやってくるんですよ、しかも引き出しの中から。
お前はドラえもんなのかターミネーターなのかってツッコんじゃいました(笑)。
まだジュニア時代のSixTONESのジェシー君が大学の助手役で出ているので、ファンの方にもぜひ!

香取慎吾主演の『透明人間』(’96年、日本テレビ系)も迷作としては外せません。
ある薬を飲むと青白い光に包まれて1時間だけ透明人間になるっていう雑な設定で、カメラマン役の香取くんが事件を追うんですけど、要は透明になったときお尻丸出しになる香取くんを見せたかっただけという。そのためにお尻に2億の保険をかけたんですよ(笑)。
まさにバブル期のテレビ業界を象徴するようなドラマでしたね。
最初はコメディタッチだったのが終盤はカルト組織との戦いというダークな展開になっていって、その迷走ぶりも含めて楽しんでほしいです」

 

今後も数多く生みだされるであろう大人SMAPの新しい世界も楽しみだ。