2月11日、老舗米菓メーカー・三幸製菓の新潟県北部にある荒川工場で起こった火災事故。
同社の従業員など複数の関係者が、防火体制に問題があったと取材に語った。
三幸製菓は煎餅の「雪の宿」や「ぱりんこ」で知られ、亀田製菓に次ぐ業界第2位だ。
現在は創業家の佐藤元保氏がCEOを務める。
「焼け跡にはバイトの女性4人と、従業員とみられる男性2人の遺体があった。
女性は防火シャッター前で見つかっており、逃げ遅れたと思われる。
アルバイトへの避難訓練をしていなかった点も問題視されている」(社会部記者)
出火原因を三幸製菓は「調査中」としているが、同社の従業員は「菓子のカスが原因の可能性がある」と指摘する。
「三幸製菓は火災事故の常習犯。
今回の事故は起こるべくして起きた人災です。
実は荒川工場は2019年までに8回も火災が起きています。
生地を焼く窯の下や、焼きあがったお菓子を運ぶコンベアの脇に受け皿があり、そこにカスが溜まる。
他社は毎日掃除をするのですが、ウチはよく溜まったまま。
そのためカスが炭化し、発火するのです」
管理体制にも問題があった。
消防は2020年に立ち入り検査をし、消火器の設置場所不良、火災報知機の作動不良、避難誘導灯の作動不良などの不備を指摘。
同社は改修計画書を提出したが、誘導灯に関する記載はなかった。
「工場内は製造ラインが迷路のように入り組んでいた。
誘導灯が作動しないと、逃げ遅れる可能性はあった」(同前)
元従業員の一人も、管理の杜撰さについて証言する。
「工場内に、出荷用のコンテナが何百個も積み上げられていました。
食品を扱うのに衛生的にありえません。
工場外には、香料が入った容器が転がっていたこともあります」
火事があった時も、製造再開を優先させていた。
三幸製菓関係者が語る。
「19年夏、新崎工場で消防車16台が出動する火災が発生しました。
その際、修理業者に、警察や消防の立ち入り前に『5日で生産を再開させたい』と伝え、昼夜問わず損傷した設備を修繕させていた。
警察や消防の立ち入り時にも作業を行わせ、業者には『テストをしている』と言い訳させていたのです」
同社は全工場で3カ月間の生産停止を決めたが、「3カ月で安全管理体制を立て直すのは難しい。同じことが繰り返されてしまうのではないか」と、同社関係者は懸念する。
三幸製菓に安全管理体制について聞くと、概ね次のように回答した。
「お亡くなりになった深夜清掃作業員の4名の方については避難訓練を実施できていませんでした。
火災報知機などの設備の稼働状況に関しては、火災により設備が消失しているところではありますが、現在調査中です。
(新崎工場の火災後、修理業者に)安全確認・復旧に向けての作業工程の協議をする中で、目標日時として『5日』と伝えた事実はあります。
荒川工場敷地内にて焼・味付工程の味付乾燥機設備内のせんべい屑焼損のインシデントがこれまで複数回発生しており、その度に消防当局の指導のもと、工程の安全性の向上に努めてまいりました。
それにもかかわらず、今回の事象が発生したことを大変重く受け止めております。
今後、専門家を交えて改めて厳しい検証を行い、本件の原因究明と再発防止策の策定および執行に向けて取り組んでまいります」
だが三幸製菓の工場の問題点はこれだけではなかった――。
そのほか、同社の荒川工場で使っていたコンベアの素材、火災の背景にあった徹底したコスト意識など、「週刊文春」で報じている。