8月20日付日本経済新聞(電子版)は、ソフトバンクグループ(SBG)が2007年3月期以降の15年間で法人税が課されたのは4期のみであり、それ以外の期は法人税が課されていなかったと報じた。
日経新聞によれば、連結純利益として約5兆円を計上した21年3月期も法人税を課されていなかったという(単体ベース)。
SBGの「法人税ゼロ」問題はこれまでもたびたび指摘されてきた。
たとえば19年9月30日付「現代ビジネス」記事『純利益1兆円のソフトバンク「法人税ゼロ」を許していいのか?』は、次のように報じている。
「2018年3月期の決算で、ソフトバンクGの売上高は約9兆1587億円の過去最高額、純利益は1兆390億円を計上していた。
ところが、これほど儲けている企業が、日本の国税に納めた法人税は、なんと『ゼロ』。
実質的に1円も払っていないというのだ」
「日経新聞の記事に基づけば、SBGの法人税回避策の特徴は主に2つ。
一つ目は、子会社からの配当金は非課税というルールを利用している点。
SBGは、傘下に抱えたソフトバンク(携帯電話事業会社)やヤフーなど多くの子企業の持ち株会社という性質を帯びており、そこからの配当金が売上の一定規模を占める。
もう1点は、複数年にわたり累積させた多額の繰越欠損金を課税所得と相殺させて法人税の支払いを免れている点。
どれも税法上のルールに則ってはいるものの、見方によっては法人税を逃れるために巧妙なスキームを構築しているという印象も受ける。
しかも金額が巨額。
ウチのような小さな企業が同じようなことをすれば税務署から目を付けられそうで、ビビッてちょっとできない。
国税局とタイマンを張れるSBGという巨大企業だからこそできる」
また、税理士はいう。
「SBGより全然規模の小さい企業でも利益の半分くらいを税金で持って行かれるところはザラにあり、個人でも必死で働いて年収2000万円稼いでも4割は税金で持って行かれる。
その一方で、多額の利益を計上している大企業のSBGが法人税を納めていないというのは、いくら合法的とはいえ果たして社会通念上許されるのかという問題はある。
SBGは国内で事業を営む上で有形・無形の公共サービス・行政サービスの恩恵にあずかっているわけで、企業として、もしくは孫正義社長個人で財団運営や寄付などの社会貢献活動に取り組んでいるのは理解できるが、まずは利益に見合った法人税を納税することを優先すべきではないか」
また、経済ジャーナリストの森岡英樹氏は、次のように解説していた。
「16年にソフトバンクグループは、イギリスの半導体設計大手のアーム・ホールディングスを約3兆3000億円で買収しました。
このアーム社の株の一部を18年3月期に、ソフトバンクグループはグループ内のソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)に現物出資のかたちで譲渡しました。
アーム株が所得価格よりも時価評価額が低くなったということで、税務上は1兆4000億円に上る欠損金が発生したとされたわけです。
ひらたく言えば、プレミアムで高めに買って、それをグループ内に移管した時に安くなったということで、欠損金が生じたということにしているわけです。
あくまでも会計上の欠損で、実際に欠損は出ていません。
外部に売ったのであれば損になりますけど、グループ内の移管で、子会社だから連結になってますから。
東京国税局は、欠損金のうち4000億円は18年3月期に計上できないと指摘し、ソフトバンクグループも修正に応じました。
だけど巨額の欠損金が残るので、追徴課税は発生しませんでした。
欠損金は10年間繰り延べられます。
海外では繰り延べは無期なので、日本のほうが税制としては厳しいわけですけど」
「国税のOBも言っていましたが、税務会計上は赤字だけど、財務会計上は過去最高益で、役員の報酬はべらぼうに高くなるわけですよ。
孫さん本人の報酬は2億2900万円で、あれだけの規模の企業体の会長としては少ないけど、ソフトバンク株を2億株以上持っているから、年間約102億円もの配当を受けています。
所得税は最高税率45%ですが、配当でもらうとキャピタルゲイン課税で20%ですんでしまう。
ソフトバンクグループ、ソフトバンク、ヤフーは親、子、孫みたいな関係になっています。
親子上場でもあまりよくないと言われているのに、3つとも上場している。
だけどこれで、自社株のTOB(株式公開買付け)をかけることによって節税ができるんです。
親子間の配当は非課税ということもあります」
SBGと同様の手法は他の大企業も実行ともいえ、国税庁の対応が待たれるところである。