大手食品メーカーの日清食品は先月、カップヌードルの発売50周年を記念して「カップヌードル 50周年コンプリートセット」を数量限定で発売。

 

そのセットに含まれる「カップヌードル ソーダ」(全4種)が大きな話題を集め、予約開始からあっという間に限定個数に到達し、現在は定価での入手が困難な状況となっている。
ネット上では賛否飛び交う、奇抜な炭酸ドリンクを実際に飲んでみた。

 

その話題性から、瞬く間に販売終了となったカップヌードル ソーダだが、発売直後からSNSなどには、手に入れた人の感想が続々とアップされた。
そこには「全部まずい」「あかんやつ」といった否定的な意見が多いようだ。

 

実際に全種類を今回は飲んでみたのだが、それぞれの感想を先にお伝えすると「美味しく飲める」が2種類、「まずくはない」が1種類、「美味しくない」1種類だった。

 

まずは美味しく飲めたものは、定番の「カップヌードル ソーダ」で、コップに注いだ見た目の通り、ほぼジンジャーエールと言っていい。
ペッパーのスパイシーさがしっかりあり、刺激が強めの辛口に仕上がっている。
意識してよく味わうと、奥の方にしょうゆの塩気を感じられるが、カップヌードルを感じることはなかった。

 

次に「カップヌードルシーフード ソーダ」は、白濁したクリームソーダ仕立てになっており、甘みは強いが酸味も感じられる。
「かきエキス」だろうか、口の中にクセのある風味が残るが嫌な感じはしない。

ここで気がついたが、「カップヌードル」という看板が邪魔している。
脳内にカップヌードルの味をイメージしながら、甘いソーダが口の中に入ってくると、どうしても一瞬”ワケワカラナク”なる。

その混乱から抜け出し、口中に広がるクリームソーダの味をしっかりと感じて理解できるようになった後半は、美味しく飲めるのだ。
本末転倒なことを言ってしまうが、普通のクリームソーダとして飲まされれば素直に美味しいと感じられそうだ。

 

問題はここからで、「カップヌードル チリトマトソーダ」。
一口目は炭酸の刺激とトマトの味がしっかり感じられる。
これは、19%という炭酸飲料にしてはかなりの果汁を入れているからで、「オランジーナ」(サントリー)で12%、新発売された「バャリース オレンヂクラシックスパークリング」(アサヒ飲料)でも10%というところからも、炭酸飲料として飛び抜けてふんだんに果汁を使っている。

しかし、そのトマトの美味しさが主役なのはほんの数秒で、その後ろからチリのピリピリしたからさが追いかけてくる。
もし、お店で注文できるなら「すみません、これのチリ抜きってできますか?」と言いたくなるような味で、それさえなければ美味しいトマトソーダのはずだ。

 

最後に控えるのが「カップヌードル カレーソーダ」。
開栓した瞬間、シュワっという音とともに広がるカレーの香りは、まさにカップヌードルカレーのあの匂い。
だけど手に持っているのは冷え冷えの缶。

嗅覚と触覚の齟齬による混乱を整理しながら、コップに注いでみるとカレーの香りがさらに広がる。
見た目は醤油ラーメンの残ったスープのようであまりよろしくない。

味はというと、レトルトカレーをコーラで割ったような味だ。
しかもコーラよりカレーが強く、美味しくない。
飽食の現代、商品化されたものでそうそうマズいものに出会うことはなくなったが、純然と美味しくないものと対峙する稀有な体験になった。

 

日清食品が様々なアイデアを凝らして開発したソーダ、美味しくないなどと言うだけでは済ませない。
アレンジして美味しくすることはできないだろうか。
まずは「芋焼酎のカップヌードル ソーダ割り」を作ってみた。

 

イメージしていた通り、美味しいジンジャー割りが出来上がる。
ある意味で臭さともいえる芋の風味を消すことなくジンジャーがバランスを整えていて飲みやすい。
カップヌードルソーダの味が強いので、焼酎を濃いめにして作っても美味しく飲むことができる。

 

次に「ソーダで美味しい」と標榜するワイン飲料の「赤玉パンチ」をチリトマトソーダで割ってみる。
真っ赤な赤玉パンチにチリトマトソーダを注ぐと、洒落たBARで出て来てもいいような、綺麗な乳白ピンクをした色のドリンクになったので、期待も高まる。

飲んでみると、トマトとワインが持つブドウの果実っぽさが相まって美味しい。
単独で飲むだ時は邪魔になっていたチリの辛味も、ソルティドッグの塩のように味を引き締める効果をもたらしていて、美味しさを引き立てている。
このアレンジは成功と言っていいだろう。

「もしかするとこれは、赤玉パンチの功績なのか」とも思ったが、静かにその気持ちは心の奥に隠した。

 

なお「カレーヌードル ソーダ」も、焼酎や赤玉パンチを合わせてみたり、レモン果汁を入れてみたりしたが、「爪痕を残そう」という意思を感じるほどにカレーの味が強く、筆者のアイデアで救うことはできなかった。

 

今回のソーダシリーズ同様、日清はかなり”攻めた”戦略をとることでも知られる。
カップヌードルに入っている肉の俗称だった「謎肉」を商品名に冠してみたり、エッジの効いたテレビCMが話題になることも多い。

 

そのことについて、日清食品社長 安藤徳隆氏は次のように話す。

「各部署からいろんなアイデアが出てくるんですけど、”面白いからやっちゃえ”と言ってあげるのが社長の仕事」

また「食品会社なので安心・安全は絶対。そのうえで、楽しくなくてはいけない」とも語った。
確かに、このソーダを飲んだ人はどうしても誰かに話したくなり、そこに楽しさが生まれている。

 

この精神は、現社長の祖父であり日清食品創業者の安藤百福から受け継いでいるといってもいいだろう。
百福は「時代の変化に対応するのではなく、変化を作り出せ」という想いのもと「人のやらないことをやれ」と社員たちに檄をとばしたという。

 

それは何も、今でいう”炎上”をさせろということではなく、日清食品の社是の一つにもなっている「食足世平(食が足りてこそ世の中が平和になる)」に基づいたものだ。

 

百福は「深決速行(深く考え行動はすばやく)」をモットーとしていたと現社長はいう。
今後も、そうした理念から生まれる日清食品の奇抜な商品に期待したい。
ただ、できればすべて美味しいものにしていただけるとありがたい。