なぜ国民は払わなければいけないのか?!迷走する「NHK受信料問題」!!

NHKの受信料問題が“迷走”している。

 

受信料の増加、受信料を支払っている「契約世帯」と支払っていない「未契約世帯」の不公平感の是正を図りたいNHKに対して、世論を背景に慎重姿勢の総務省との間での攻防が続いている。

 

そもそも国民は、なぜNHK受信料を支払う必要があるのだろうか。

 

今年3月、NHKがネット同時配信を開始したことで、総務省がNHK受信料の負担世帯を全世帯に拡大する方向で検討している、と一部大手紙が報道した。

 

これは、現在はテレビを持つ世帯だけに限定されているNHK受信料を、ネット配信を機会にテレビの有無を問わず、全世帯を対象にするもので、総務省が有識者会議を立ち上げて議論を開始するという内容だった。

 

では、現在のNHKの放送受信料はどんな状況なのか。

 

2006年に「受信料支払の義務化」の検討が開始され、「未払い者への督促が開始」されると支払率は上昇し、2019年には83%にまで上昇している。
しかし、80%を超えている受信料支払率も、公共放送を持つ他国の受信料支払率と比較すると低く、2019年度には未契約世帯対応に394億円もかかるなど、営業経費を759億円も支出しており、高止まりしている。
その上、現状では新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、未契約世帯に対する活動ができなくなっている。

 

そこでNHKは、

1.テレビ設置の届け出義務化、
2.テレビ未設置の届け出義務化、
3.未契約者の氏名を公益企業などに照会できる制度の導入

を政府に要望した。
これに対して、総務省は「公共放送の在り方に関する検討分科会」を設置し検討を進めている。

 

そもそも、NHKの受信料は払わなければならないものなのだろうか。
その考え方は時代とともに変化してきた。

 

テレビ放送がNHKしかなかった1964年の臨時放送関係法制調査会答申では、「受信料は、NHKの維持運営のため、法律によってNHKに徴収権の認められた、『受信料』という名の特殊な負担金」と位置付けられた。
その後、民間放送が開始されると、1988年2月に「放送法及び電波法の一部を改正する法律案」が成立した。
同法では、広告料を財源とする民間放送と受信料を財源とするNHKの二本立てとすることが定められた。

 

放送法では、NHKの放送を受信することができる受信設備(テレビ等)を設置した者は、NHKとの放送受信契約を締結しなければならないという「放送受信契約締結義務」(放送法第 64 条第1項)を定め、受信料の月額は国会がNHKの予算等の承認をすることによって定めるとされた(同法第 70 条第4項)。

 

1989年6月には衛星放送が始まり、「衛星付加受信料」の徴収が開始された。
1989年4月には消費税3%が導入される。
この時、NHKの受信料には消費税がかかるのかが議論となった。
政府は、受信料を「資産譲渡等の対価に類するもの」として課税対象とした。
政府は、受信料が資産譲渡等の対価に類するという解釈について、「NHKの受信料の性格はいつでもナショナルミニマムとしての公共放送を受信できる状態にある者の便益に着目した料金」と説明した。
つまり、放送サービスそのものの対価ではなく、公共放送を受信できる“便益”に着目した料金という解釈だ。

 

一方で、インターネットの急速な普及とともに動画配信など通信と放送の新たな融合が進むとNHKの受信料を巡る環境は大きく変化し、受信料の不払いなどが増加することになる。

 

NHKは受信料の公平負担を確保するため、2009年から未契約者に対する民事訴訟を開始した。
この訴訟に対して、2017年12月6日、最高裁判所は受信料制度に合憲との判断を下した。

 

最高裁判決では、公共放送と民間放送の二本立て制度について、「公共放送事業者と民間放送事業者とが、各々その長所を発揮するとともに、互いに他を啓もうし、各々その欠点を補い、放送により国民が十分福祉を享受することができるように図るべく、二本立て体制を採ることとしたもの」と判断した。

 

その上で、NHKの受信料を、「特定の個人、団体または国家機関等から財政面での支配や影響がNHKに及ぶことのないようにするものとして、(中略)NHKの放送を受信できる環境にある者に広く公平に負担を求めることによって、NHKが全体により支えられる事業体であるべきことを示すもの」とした。

 

さらに、受信料という仕組みは、「憲法第 21 条の保障する表現の自由の下で国民の知る権利を実質的に充足すべく採用され、その目的にかなう合理的なものであると解される」と合憲性を認めた。

 

しかしながら、テレビを保有する世帯は2010年から2020年の10年間で98.8%から93.8%に減少。今後も一段の減少が見込まれている。
特に、若年層では“テレビ離れ”が進んでいる。

 

内閣府の2020年3月の消費動向調査によると、世帯主の年齢が29歳以下の単身世帯では、カラーテレビの普及率は81.5%であるのに対し、スマートフォンは97.8%、パソコンは84.4%とスマートフォンやパソコンの保有率がテレビを上回っている。
NHKも2020年4月1日から受信契約を締結している者に対して放送番組をインターネットで常時同時配信するサービスを無料で開始している。

 

こうした環境の大きな変化に対して、NHKは前述した

1.テレビ設置の届け出義務化、
2.テレビ未設置の届け出義務化、
3.未契約者の氏名を公益企業などに照会できる制度の導入、

の3点を要望したのだ。

 

80%を超えているNHK受信料支払率も、公共放送を持つ他国の受信料支払率と比較すると低いと前述した。
テレビ等の受信機設置を申告する義務があり、申告をしなかった場合には罰則規定が設けられている国も多い。
さらに、多くの国では情報収集のために、郵便局の住所情報、住民登録情報、住民税支払者情報、電気料金支払者情報などの情報を利用することができる。
だが、11月20日に開催された総務省の「公共放送の在り方に関する検討分科会」は、NHKの要望している3点について「不適当」として制度化を見送る方針を固めた。

 

NHKは特殊法人として受信料に支えられ、法人税免除などの恩恵がある上、インターネット配信などで経営の自由度を高めようとする反面、保護強化を先行させる姿勢に視聴者の反発は大きいと判断した。

 

菅義偉首相により抜擢された武田総務相は11月20日の会見で、「携帯電話料金と一緒で、新型コロナウイルス禍において公共放送として受信料の低廉化を図ることは当然だ」と述べ、“スガノミクス”の片鱗をのぞかせた。
それでも、分科会では「公平負担を目指すなら、不法に支払いを免れた者への割増金制度の導入を検討すべき」との声が多く、NHK受信料問題は不払い者への割増金制度に舞台を移して、検討が続くことになった。

 

大きな環境変化の今、NHKだけではなくテレビ放送そのものの存在意義が問われている。

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