劇場版「鬼滅の刃 無限列車編」公開初日興収10億円突破!!

アニメ映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」(外崎春雄監督)が公開初日の16日だけで興行収入(興収)10億円を突破したことが17日、分かった。

 

漫画家・吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)氏原作で、竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が家族を殺した鬼と戦うために修業し、鬼と化した妹禰豆子(ねずこ)を人間に戻す方法を探して戦う物語。
16年2月に「週刊少年ジャンプ」で連載を開始。
19年にテレビアニメが放送されて人気絶頂の中、5月に連載を終えて話題となった。

 

その人気を受け、今回は全国403の映画館での公開と破格の規模で封切られた。
都内のTOHOシネマズ新宿では初日の16日に全12スクリーン中、11スクリーンで計42回、翌17日も41回上映された。

 

本作は、『週刊少年ジャンプ』で連載されていた吾峠呼世晴の漫画『鬼滅の刃』(集英社)をアニメ映画化したものだ。
大正時代を舞台に、家族を鬼に殺された竈門炭治郎が、鬼殺隊の剣士となって鬼と戦う姿を描いた本作は、昨年アニメシリーズが放送されると人気が爆発。
先日発売された第22巻でシリーズ累計発行部数が1億部(電子書籍含む)となる令和を代表する大ヒットとなった。

 

すでに連載は終了しているが、その勢いは留まることを知らない。
今回のアニメ映画の上映も異例の盛り上がりで、時刻表と言われるくらいびっしりと上映回数を増やし、コロナ禍の影響で今まで席数を半分にしていた映画館も『無限列車編』では、一部劇場を除き全席開放となった。

 

『無限列車編』は、40人以上の乗客が行方不明になっているという「無限列車」の中で物語が進んでいく。
汽車に乗り込んだ炭治郎、禰豆子、嘴平伊之助、我妻善逸はすぐに鬼と遭遇。
鬼は柱(鬼殺隊、最高位の剣士)の煉獄杏寿郎があっさりと倒すが、どうにも様子がおかしい。

 

実は車掌が切符を切ると、夢を操る鬼・魘夢の術が発動する仕掛けとなっており、炭治郎たちは深い眠りについていたのだ。
魘夢は、人間たちを炭治郎たちの夢の中に送り込み、無意識の領域にある精神の核を破壊させようとする。

 

劇中では炭治郎たちの観ている夢が描かれるのだが、「列車の中で夢を観ている」炭治郎たちの状態と「劇場で映画を観ている」観客の状態がシンクロする構成が面白い。
古くはリュミエール兄弟による短編サイレント映画『ラ・シオタ駅への列車の到着』や、黒澤明監督の『天国と地獄』、近年ではヨン・サンホ監督の『新感染 ファイナル・エクスプレス』など、列車と映画は相性がいい。

 

アニメ映画では、りんたろう監督の『銀河鉄道999(劇場版)』が真っ先に思い浮かぶのだが、ゴールに向かって付き進む「動く密室」としての列車は、映画のアナロジーとして秀逸だ。
おそらくもっとも映画的な映像は、西部劇に登場する機関車の屋根の上を主人公が走る場面だと思うのだが、もちろん『無限列車編』にも健在である。

 

一方、夢もまた、映画的なモチーフである。

黒澤明監督の『夢』や、クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』など、「夢」を題材にした映画も枚挙に暇がない。
アニメ映画ではなんと言っても押井守監督の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(以下、『ビューティフル・ドリーマー』)が思い浮かぶ。
本作は、夢の中に閉じ込められた主人公が悪戦苦闘する姿を通して『うる星やつら』というアニメそのものを批評したアニメ史に残る作品だ。
後のアニメにも影響を与えており、『涼宮ハルヒの消失』、『劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編] 叛逆の物語』、『えいがのおそ松さん』等、テレビアニメが劇場映画になる際に夢を題材にすることは多い。

 

『無限列車編』もまた『ビューティフル・ドリーマー』の系譜にあるアニメ映画だ。
夢を題材にしたアニメのテーマは決まっており、夢(アニメ)の世界に浸っている若者たちが、そこから脱出する姿を通して青春の終わりを描くことだ。

 

同時に劇中で描かれる夢には時代の気分が反映さる。
『ビューティフル・ドリーマー』には80年代の高度消費社会、それ以降の作品には平成日本の不況だが、それなりに平和だった時代の生暖かい空気が込められていた。

 

しかし、令和のコロナ禍に作られた『無限列車編』には、そんな甘さが微塵もない。
夢の中で炭治郎は、鬼に殺された家族と再会する。
しかし、過酷な現実を生きる炭治郎は、夢の世界に安住することができない。
そんな彼に襲いかかるのは、夢を求めて魘夢に従った者たちである。
彼らは、炭治郎が守ろうとしていた人たちで、守るべき相手が敵となって襲いかかる残酷さは映画で観ると、より切実な痛みとして感じとれた。

 

原作漫画に散りばめられたモチーフを丁寧に拾いあげ、じっくりと見せてくれるのがアニメ版の良さだったが、それは本作でも健在だ。
物語は無限列車での戦いを終えた後で登場する十二鬼月の猗窩座と煉獄が戦う場面でクライマックスを迎える。
漫画で読んだ時は、無限列車のエピソードと猗窩座VS煉獄の話は別々の話に感じたが、劇場映画で改めて観ると、強さを追求する不老不死の猗窩座に対し、有限の肉体を持つ人間として最後まで戦い、炭治郎たちに志を託して死んでいく煉獄の姿が、『無限列車編』における「夢からの脱出」というテーマと重なっていたことが、とてもよくわかる。

 

笑って泣ける活劇アニメ映画として本作はとても面白いのだが、「夢」の描かれ方に注目すると、令和の日本人が抱える大きなテーマが見えてくる。
2020年現在をもっとも象徴する作品である。

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